第88回の全国高校生NEWSは、青森県立三本木農業恵拓高等学校の食品科学科。同校で栽培・収穫された規格外トマトを活用し作られた防災食“三農トマトカレー”を開発した生徒たちに話を聞きました。
〜規格外野菜を活用した 温かく食べられる防災食
“三農トマトカレー”女子高生らしさを詰め込んだ〜
“いつ起こるかわからない災害時に、被災者に寄り添う防災食を作りたい”。その想いから、2024年4月、青森県立三本木農業恵拓高等学校の食品科学科の生徒たちは防災食の開発に取り組み始めました。開発にあたり、十和田市の危機管理防災室の方に防災食について話を伺い学びを深める中で、乾パンやおにぎりなど防災食の種類が豊富になってきている一方、汁物など温かい状態で食べられるものが求められていることを知ったそう。自治体によってはレトルトカレーを備蓄しているところもあることを知り、備蓄用のレトルトカレーを開発することにしました。そして2025年5月に完成した商品が“三農トマトカレー”です。
“三農トマトカレー”に入っている具材は、トマトとオニオンペーストのみと至ってシンプル。カレーに使用されているトマトは、同校の畑で収穫された規格外野菜です。ゴボウやじゃがいも、リンゴなど多くの野菜や果物を栽培している中でトマトに目をつけたのは、煮込み料理はもちろん、炒め物にも活用できる加工のしやすさがポイント。大きすぎたり、熟しすぎて販売できない規格外のトマトを再利用することでフードロスにも貢献しできる商品になっています。またカレールーは、辛味と甘味のバランスがちょうどいい配合にするため、完成まで8回の改良を重ねました。「災害時には老若男女誰でも食べられるように、甘みもあるけれどトマトの酸味も感じられるような味に決めた。ルーの配合には一番時間がかかったけれど、楽しかった」と齋藤彩可さん(3年)は話してくれました。味が決まってからは本格的に製造へ。現在は地元の企業に製造を委託していますが、いずれは学校にある製造施設での製造を目指しているそうです。
商品完成後、今年の5月には同県三沢市にある三沢空港、6月には十和田市にある道の駅とわだ「とわだぴあ」にて販売会を実施! 三沢空港での販売会では、準備していた100食近くのレトルトカレーが販売できたそうです。北野大地くん(3年)は「小さい子どもが試食してくれた時に、美味しいと言いながら飛び跳ねて喜んでくれたことが印象に残っている。小さい子にも美味しく食べてもらえたのが目に見えた瞬間だったので嬉しかった」と、販売会での出来事を振り返りました。
現在“三農トマトカレー”は、道の駅とわだ「とわだぴあ」にて販売中。また今後は販売会の際に収集したアンケートをもとに改良し、第2弾のレトルトカレーの販売も検討中とのこと。北野くんは「地域の方々の自宅にぜひ備蓄用として“三農トマトカレー”を置いて欲しい。美味しいカレーなので、日常でお腹が空いた時にもぜひ食べて欲しい」と話します。“温かい防災食を作りたい”という生徒たちの想いから開発された“三農トマトカレー”は、非常時に地域の人を支える防災食として安心を届けていきます。
令和3年に、普通科と農業科を併設する青森県唯一の学校として十和田市に開校。普通科、植物科学科、動物科学科、環境工学科、食品科学科の5つの学科で構成され、大規模な高校として他にはないユニークな活動を展開。「未来拓創」の校是のもと、地域農業及び地域産業を支える人財を育成しています。
HP:https://www.sanbongi-ah.asn.ed.jp/