【インタビュー】Worker’s file 高校教師 佐藤剛史「本当にやりたいことがあるのなら、固定観念を捨てることから始めてください」

さまざまな職業で活躍する人に迫るWorker’s file。第29 回目は、高校生にも身近な高校の教師・佐藤先生。サラリーマンの経験を経て教師となり、教師歴は21年。現在は岐阜県にある岐阜聖徳学園高校で教鞭を執る佐藤先生に迫ります。

Worker’s file 高校教師 佐藤剛史「本当にやりたいことがあるのなら、固定観念を捨てることから始めてください」

佐藤剛史(さとうつよし)
千葉県生まれ・岐阜県育ち。高校生から始めたラグビーをするため、スポーツ強豪校でもある愛知県の中京大学に進学。卒業後は某自動車会社に就職するも、教師を志し1年で退職。その後教員免許を取得し、特別支援学校での教師を経て、岐阜聖徳学園高校に着任。現在は同校で保健体育の教科を受け持ち、ラグビー部の顧問、さらに生徒指導主事を務めている。

生徒に最初に教えることは『unlearn』と、人に『親切』にすること


ー仕事内容を教えてください。

全日制高校の教師をしており、受け持っている教科は保健体育で、ラグビー部の顧問、生徒指導主事という生徒指導部のトップも務めています。朝8時前に出勤をして、ラグビー部の朝練習を見てから校内に入って先生たちと軽く打ち合わせ。その後登校してくる生徒たちを迎え入れるという朝の業務があり、その後は通常の授業を行います。放課後は部活動に出て、だいたい19 時には下校する生徒を見送るというのが1日の流れになります。


ー高校の教師になるまでの経緯を教えてください。

僕は大学卒業後、自動車会社に就職をしました。もともとラグビーをやっていたため、実業団の選手でもあったのですが、同期で入社した人たちに比べると仕事に対する知識などに差があるなと感じ、仕事もラグビーも一生懸命やらないといけないと思って。そんな時に当時の部長さんから「君は本当に真面目に仕事をしている」と褒められてすごく嬉しかったんですけど、続けて「仕事を覚えることも大事だけど、人の生き方を見ることはもっと大事だ」と言われたんです。目の前のことしか考えていなかった僕は、その言葉を聞いた時に、頭をハンマーで殴られたような衝撃を受けました。それからは、いろいろな人の目線で物事を考えたり、他部署の人ともコミュニケーションを取るようにして。そこから自分が本当にやりたいことって何だろうと考えた時に、いつも何かに夢中になっていたい、感動していたい、仲間と繋がり合っていたいなと思ったんです。そう思う所以はどこにあるのだろうと考えた時に、学校だと思って。学校にいた時は、いつも何かに夢中になっていたし、たくさんの感動を味わうことができて、仲間と繋がり合うこともできたなと思い、教師を目指すことにしました。そこからは科目等履修生という制度を使い、週に1回、半年間の授業を受けて教員免許を取得しました。将来的には普通高校でラグビー部の顧問をやりたいと思っていたのですが、恩師に相談した時に、「特別支援学校も人が必要」ということを聞いて。なかなか見ることができない世界を見ておこうと思い、特別支援学校の教師になりました。そこではハンディキャップを持った子どもたちや、そういったお子さんを持つ親御さんとのお付き合いなどから学べることが多く、良い経験になりましたね。


ー仕事をする中でのやりがいを教えてください。

生徒たちが変わっていく姿を間近で見られることは嬉しいです。僕が大事にしている想いの一つに“人は人にしてもらったことでしか学べない”というものがあります。だから僕が生徒に最初に教えることは人に親切にすることなんです。親切にしてもらうと、普段は喋らないような子も緊張感がほぐれて、だんだん自分を出してくれるんですよね。人って身を置く環境で自然に変わっていくので、優しい眼差しを向けてもらえる人は優しい表情になるだろうし、逆にいつも怖い顔と強い口調で話されているような人は、出てくる言葉もキツくなるのかなと思います。だから良い意味で生徒が個性を出せる環境を作れたらいいなと思っています。


ー仕事をしていく中で大事にしていることを教えてください。

“主体性”ですね。授業でも部活でも、その時にやらないといけないことや、ルールの指示はするんですけど、アプローチの仕方や目標設定の縛りを設けることはしません。生徒には、“自分がどうなりたいか、終わった時にどんな気持ちになりたいか”ということを想像させて逆算していった時に、今自分がやるべきことは何なのか、どういう順番でやるべきなのかというプランニングをさせるようにしています。そんな中で動き出しが鈍い子とかって、単にサボっているわけではなくて、どうしていいのかがわからない子だと思っていて。だから「一緒にやろうか」と声をかけると、喜んでやってくれたりするんです。“サボっている”とかっていう考えってたぶん、大人が子どもに対する固定観念があるんですよね。だからその子の想いの本質をしっかりと見てあげるというのが大事かなと思います。


ー佐藤先生が思う先生像を教えてください。

教師っていろいろなタイプの人がいると思うんですけど、僕自身が指導を受けてきた中で印象に残っている先生を漢字一文字で表すと“見”という漢字になります。生徒として見守ってもらえたという気持ちが強いですね。一方、これから僕自身がしていきたい指導を漢字一文字で表すと“遊”という漢字です。これは子どもでも大人でも一緒だと思うんですけど、自分が好きなことをやって夢中になっている時って、時間も忘れるし、疲れも感じないことがあると思うんです。それがどういう感覚なのかというと、遊んでいる時のあの感覚だと思うんですよね。だから生徒が夢中になれるようなことを一緒に見つけられる先生になりたいと思っています。だけどこれは僕のスタイルなので、学校という組織にはいろいろなスタイルの人がいた方がいいんです。もちろん、生徒が怖がるような威厳のある先生も必要だと思いますし、そういうタイプの先生から感じられる愛情もあります。だから、学校にはいろいろなスタイルの先生がいることが大事だと思いますね。


ー高校生にメッセージをお願いします。

夢は必ず叶います! 僕自身、脱サラしてわかったことがあって、身の置き所がなくなることを想像した時ってみんな不安になると思うんです。だけど、“これがやりたい”という熱意を持っていることで、その不安が吹き飛ぶくらいワクワクすることができたんです。だから、高校生の皆さんも本当にやりたいことがあるのなら、固定観念を捨てることから始めて、今すぐ行動してください。自分の思いを大切にできる人は、必ず夢が叶います。

 

お仕事言葉辞典 高校教師編

【unlearn】 アンラーン

「Learn(学ぶ)」に、否定を意味する「Un」をつけることで、学んだことを意識的に忘れること、知識・先入観・習慣などを捨て去ることを指す言葉。学んだことを忘れ、固定観念などをなくす方法で「学びほぐし」とも言われる。

お仕事道具見せてください!

Worker’s file 高校教師 佐藤剛史「本当にやりたいことがあるのなら、固定観念を捨てることから始めてください」

ストップウォッチ、ホイッスル、ボールペン
保健体育の授業、ラグビー部に欠かせない2点。さらに生徒の進路用の書類など、勝負事に使うボールペンは佐藤先生のお仕事には欠かせない道具です。

佐藤先生が勤務されている高校

岐阜聖徳学園高等学校
http://www.shotoku.jp/gsh/