【インタビュー】音楽プロデューサー・DJ tofubeats「“これは本当に自分が出したかったものなのか” というのを常に自分に問いかける」

第110回のWorker’s fileは、DJとして活動するかたわら、映画やドラマなどで使用される音楽を制作するなど、音楽プロデューサーとしても活躍するtofubeatsさん。TVアニメ『正反対な君と僕』のサウンドトラックの制作秘話や、音楽プロデューサーとしての仕事のやりがいなどを聞きました。

【インタビュー】音楽プロデューサー・DJ tofubeats「“これは本当に自分が出したかったものなのか” というのを常に自分に問いかける」

音楽プロデューサー・DJ tofubeats
兵庫県神戸市出身。学生時代からさまざまなアーティストのプロデュースや楽曲提供、楽曲のリミックスを行う。2013年4月に『水星 feat.オノマトペ大臣』を収録した自主制作アルバム『lost decade』を発売。さまざまなアーティストとの共演やプロデュース、サウンドトラックの制作など多岐にわたり活躍。また楽曲提供のほか、YUKI、ももいろクローバーZ、Travis Japanなどのリミックスも多く手がけている。

 

“これは本当に自分が出したかったものなのか”
というのを常に自分に問いかける

—仕事内容を教えてください。

メインの仕事が二つありまして、一つは音楽プロデューサーで、もう一つはクラブでお客様に踊ってもらうための音楽をかけるDJをしています。今回は音楽プロデューサーとしてお話をさせていただくと、自分の楽曲として自分の作りたい音楽を作ることもあれば、オファーをいただいて音楽を作ることもあります。直近では、TVアニメ『正反対な君と僕』のサウンドトラックを制作しました。アニメやドラマで流れているサウンドトラックを制作する際は、最初に「日常で使う曲①」といったように、どういう場面で使う曲か書かれたリストが送られてきて、それをもとに音楽を作っていきます。『正反対な君と僕』では最終的に60曲くらいの楽曲を作っていて。日常で使う曲だけでも何パターンもあり、“コミカルな感じ”や“しっとりな感じ”といったような指示が書かれているので、自分から提案できるものも入れながら、それぞれのイメージに合った曲を作っていく感じです。

—現在の仕事に至るまでの経緯を教えてください。

中学校に入学した時にベースを買ってもらったのですが、1週間でやめて、バンドをしていた友達にあげてしまったんです。今考えたらなんであげたんだろうって感じなんですけど、その話を親にしたらめちゃくちゃ怒られて。ただもともと音楽は好きだったので、いろいろ調べていたところ、ヒップホップというジャンルでは、パソコンや専用の機械を買えば楽器ができなくても音楽を作れることを知りました。親にその機材が欲しいことを言うと「買ってもらったベースを手放しておいてそんな甘い話があるわけないだろ」と言われましたね。当時僕は中学2年生で、親が「英検準二級に受かったら逆立ちして学校の校庭回ったるわ」と言っていて(笑)。「準二級に合格したら、逆立ちで校庭を回らないでいいから機材を買ってくれ」と交渉し、実際に一発で合格して機材を買ってもらい、音楽制作を始めました。ただ、始めたのはいいものの、ヒップホップなど音楽を共有できる友達が周りにいなくて。インターネットの掲示板に作った曲をアップロードして、オンラインでやり取りをしながら技術を磨いていきました。高校生になると活動範囲が広がり、それまでオンラインでやり取りをしていた人たちとリアルで会ったり、ライブハウスに行ったりするようになって。自分が作った音楽で初めてお金をもらったのは16〜17歳の頃でしたね。18歳になってからは、クラブでDJとして出演し自分が作った曲を流していました。音楽制作という点では、若手の頃はコンペに出て仕事をもらうこともしていたのですが、最近は自分の名前や作っている音楽の雰囲気を知ってオファーをいただくことも増えました。DJとしても最初は、ライブハウスや小さいイベントなどに出演し、どんどん序列を上げていき、大規模なステージでDJができるようになっていった感じです。

—ご自身の中で、転機となった楽曲はありますか?

2012年にリリースした『水星』です。初めて自分の知らない人に“曲を聴いている”と言ってもらえた曲ですね。全く知らない人が曲を聴いて自分のことを知ってくれるというのが音楽を作ったり発売することの醍醐味だと思うのですが、自分の思いもしないところに届いていく面白さを『水星』で感じました。DJをしている時は、自分の曲を聴いてくれる人の顔が見えていたので、自分の知らない人の耳に自分の名前や音楽が届いたことを実感した時でしたね。

—TVアニメ『正反対な君と僕』のサウンドトラックを担当することが決まった時の率直な感想を教えてください。

僕は漫画をすごく読むタイプではないのですが、インフルエンザになった時にたまたまこの漫画を見つけて、寝込みながら全部読んだんです。面白いなぁと思っていたら、その1年後くらいに音楽制作としてオファーをいただいて、本当にびっくりしました。自分が読んでいた作品ということもあり、漫画の内容もわかっていたので、ぜひやらせてくださいと受けさせていただきました。

—TVアニメ『正反対な君と僕』の音楽を制作する際にこだわったポイントを教えてください。  

キラキラな高校生活という感じの作品なので、そういう可愛らしい曲はできるかなと思ったのですが、僕自身が男子校出身ということもあり、『正反対な君と僕』のようなキラキラした実体験があまりにもなくて。わからないなりに“こういう明るい高校生活だったらいいな”みたいな曲にしようというのはイメージとしてありましたね。オファーをいただいた時から、全体的に可愛らしさもあるといいということだったので、特にそこは意識して制作しました。また登場人物に悪い人がおらず、全体的に意地悪な部分がない作品なので、そういう雰囲気を曲でも伝えられたらなと思っていて。この漫画を読んだ時に感じた雰囲気を自分が作る音楽でサポートできたらという思いで制作に取り組みました。

—TVアニメ『正反対な君と僕』の音楽の中で、特に注目して聴いてほしい部分はありますか?

作中に登場するキャラクター・イエティの劇中映画のテーマ曲ですかね。本編ではあまり使われないところだと思うのですが、“せっかく作るのなら!”と友達のバイオリニストに協力してもらい、ストリングスを全部生でレコーディングしました。実際に8〜9人の編成を作ってもらい、譜面も書いてもらったので、とてもリッチな音楽になりました。アニメの中では、鈴木と谷の気持ちが動くところでも生のストリングスが使われているので、ぜひ注目してほしいです。

—ご自身の楽曲を制作する時と、タイアップ楽曲を制作する時の違いを教えてください。

優先順位の違いですかね。作品ありきでオファーをいただいたタイアップは、作品に対してどれくらい寄り添えるかがすごく大事だと思っていて。ミュージシャンをやっていると自分が作ったものが一番という考え方に陥りがちなのですが、オファーをいただいた映画やドラマ、アニメの主題歌では、作品の良さが見えなかったらタイアップする意味がないわけですよ。僕も昔、映画のサウンドトラックを作った時に、自分っぽい曲を作った結果、作品に合わずに全部作り直しになったことがありました。サウンドトラックはあくまで作品やストーリーが映えるための補助となるものなので、作品が良く見えるような音楽作りをするようにタイアップの時は意識しています。

—仕事をする上で持たれているポリシーはありますか?  

音楽を作る際に自分の本心と離れたことをしないよう、常に“自分が本当にやりたいことは何か”、“何をするべきなのか”というような感じで、自分の心の声を聞くようにしています。自分の名前で音楽をリリースしたり、タイアップとして作品に参加すると“tofubeatsが作った曲”として世に出るので、中途半端なことや、本心ではないものを作ったりすると、それが一生自分の名前で残り続けるんですよね。これってすごいことである反面怖いことでもあるので、自分の名前で物を出す時は、“これは本当に自分が出したかったものなのか”とか“自分が納得して出しているのか”というのを常に自分に問いかけることを意識しています。 —仕事のやりがいを教えてください。 DJとしてステージの上に立って演奏することは、他の仕事ではなかなか経験できない代え難い経験だなと感じます。また、自分の作った曲を他のアーティストの方が大きいステージで歌ってくれることもあって。自分の名前で作った音楽が知らない人に届くことは、やっぱりすごいことだと思いますね。たくさんの方に自分の音楽を聴いていただけることはなかなかできることではないので、そういう意味ではやりがいがある仕事じゃないかなと思います。

—音楽に関する仕事に興味のある高校生がしておくといいことはありますか?

僕は音楽の学校で専門的に学ぶというルートは辿っておらず、音楽をたくさん作り、いろいろな人に聴かせ続けてきたことで今の仕事があります。だから歌手になりたいならまず歌う、音楽を作りたいならまず作るのが一番だと思います。学校に行かなくても音楽はできるので、誰よりも歌って、誰よりも作っていれば、自ずと結果はついてくるんじゃないかなと思います。あとは僕自身、早くに音楽を始めたことが何よりよかったのかなと思っていて。やっぱり若いと恥をかくのも嫌じゃないし、学生だったら大人に聞き放題じゃないですか。成長するためには絶対に恥をかかないといけないし、恥をかくことに慣れるというか。結局ステージで歌った回数や作った曲数でしか上手くならないと僕は思うので、いつかではなくて、今どれだけ恥をかけるかだと思いますよ。

—音楽制作に興味のある高校生にメッセージをお願いします。

僕は高校生になった途端にアルバイトをしたり、オフ会に行ったりしていて、高校生ってなんでもできるなと思っていました。さらに今は、お金をかけずにスマートフォンで音楽を作り、世界に羽ばたいている人がいるくらい挑戦しやすい環境になっています。ぜひいっぱい音楽を作って、たくさんの人に聴かせていけばいいのではないかなと思います。

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【インタビュー】音楽プロデューサー・DJ tofubeats「“これは本当に自分が出したかったものなのか” というのを常に自分に問いかける」マイク
声に限らず、楽器などさまざまな音を収録する時に使用しているマイク。事務所内に専用の防音室があり、そこをスタジオにして音楽制作をしているそうです。

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音楽プロデューサー・DJ編
【プリプロダクション】 ぷりぷろだくしょん

本格的なレコーディングをする前に行う、楽曲の構成、アレンジ、キーなどの方向性を確認するための簡易的なレコーディング。プリプロダクションで上手く録れたものは実際に使うこともある。

INFORMATION
\tofubeatsさんが音楽制作を担当/

【インタビュー】音楽プロデューサー・DJ tofubeats「“これは本当に自分が出したかったものなのか” というのを常に自分に問いかける」
©︎阿賀沢紅茶/集英社・「正反対な君と僕」製作委員会

TVアニメ 『正反対な君と僕』
1月11日(日)より放送・配信開始

公式HP:https://sh-anime.shochiku.co.jp/seihantai_anime/