【インタビュー】映画監督・舞台プロデューサー 伊藤秀隆「 映像は全部コントロールして 作り込めるところが面白い」

第105回のWorker’s fileは、映画や舞台、イベントなどの制作を行う、株式会社PLANET KIDS ENTERTAINMENTの代表取締役で、映画監督兼舞台プロデューサーの伊藤秀隆さん。制作現場で働く仕事の魅力を聞きました。

【インタビュー】映画監督・舞台プロデューサー 伊藤秀隆「 映像は全部コントロールして 作り込めるところが面白い」

映画監督・舞台プロデューサー伊藤健作
東京都出身。暁星高等学校卒業後、渡米。コミュニティカレッジで勉強したのち、2002年に南カリフォルニア大学 映画学部に編入。帰国後は、フリーランスのディレクターとして活動。2010年に株式会社 PLANET KIDS ENTERTAINMENTを法人登記。バラエティ番組『逃走中』、舞台『2.5次元ダンスライブ「ツキウタ。」ステージ』、さらにリアル脱出ゲームの演出や制作に携わる。


映像は全部コントロールして作り込めるところが面白い



💬仕事内容を教えてください。

はじめに株式会社PLANET KIDS ENTERTAINMENTは、映画や舞台、イベントの企画・制作を一貫して行っている会社です。映像作品の企画から撮影、編集、舞台の運営や演出など、会社としての仕事は多岐に渡るのですが、その中でも僕は舞台プロデューサーと映画監督をしています。現在は舞台プロデュースの仕事が多く、演出家や脚本家といったスタッフ、キャストを選定するのも作品の責任者であるプロデューサーの仕事になります。映画監督としては、映画の企画から始まり、キャスティングから撮影、編集まで一通り行っています。

💬現在の仕事に至るまでの経緯を教えてください。

映像に興味を持ったのは小学生の時で、父親がゴルフのコンペでもらってきたビデオカメラで映像を撮るのを楽しんでいたのがきっかけです。映像の中でも映画に興味を持ったのは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』。“こんなに面白い映画が作れるんだ!”と感動して、ロバート・ゼメキス監督と同じ南カリフォルニア大学で映像を学びたいと思うようになりました。高校卒業後は渡米して、南カリフォルニア大学に編入するために、2年間コミュニティカレッジで勉強していました。当時の南カリフォルニア大学の映画学部は、100人に1人しか入れないくらい競争率が高くて。1年に2回受験があるのですが、2回とも落ちてしまい、3回目の受験で合格しました。アメリカ留学中の二十歳の時には、今の会社の元になった留学生のための映画サークル「PLANET KIDS」を立ち上げて、短編映画を作っていました。帰国後はフリーのディレクターとして、バラエティ番組『逃走中』や、リアル脱出ゲームなどのイベントに携わっていました。だんだんと仕事が増えてきた時に、制作の一部だけではなくて丸ごと引き受けた方が気心の知れた仲間と一緒に仕事ができるのではないかと考え、2012年に法人登記をして株式会社 PLANET KIDS ENTERTAINMENTを立ち上げました。最初はテレビ番組や映画などがメインだったのですが、リアル脱出ゲームで『逆転裁判』や『名探偵コナン』といったアニメ作品とのコラボレーションした経験を活かし、2016年に『2.5次元ダンスライブ「ツキウタ。」ステージ』の制作をすることになりました。その作品がきっかけで、今は2.5次元関連の仕事を多くしています。

💬初めて映画を撮った時の感想を教えてください。

初めて映画を撮ったのは19歳の時でした。その時は日本の怪談である『四谷怪談』をアメリカの留学生の物語にアレンジして映画館で上映しました。映画を作るためにはお金がいるので、撮影資金を集めるために大学のキャンパスでカレーライスを作って、缶ジュースとセットにして販売したりしていましたね。当時は今みたいにインターネットが主流ではなかったため、映画完成後は現地の日本人コミュニティに置いてある日本人向けのフリーペーパーに自主制作映画の情報を掲載してもらえるよう売り込んだり、映画館での上映を取材してもらい話題にしてもらうことで集客をしました。

💬最も印象に残っている仕事を教えてください。

約1ヶ月という短い期間で、大赤字と大ヒットを同時に経験したことです。大赤字を出してしまったのは、初めて作ったリアル脱出ゲームでした。シミュレーション段階ではとても盛り上がったのですが、いざ本番になったらチケットが全然売れずに、結果大赤字でしたね。一方、その1ヶ月後に始まった別タイトルのリアル脱出ゲームでは、声優さんを稼働したこともあり、想定を上回る人が来てくれて。そういった大ヒットと大赤字を一緒に経験するということはなかなかできないので印象に残っていますね。

💬映画や舞台だけでなく、リアル脱出ゲームなど幅広いコンテンツに関わられていると思うのですが、そういった経験が別コンテンツで活かされることはあるのですか?

今もテレビで放送されている『逃走中』は、もともとは江戸時代や邪馬台国を舞台にして、逃走者がその世界を逃げ回るという番組だったんです。そのため逃走者が誰と出会い誰に話しかけるのかが読めず、200人近くのエキストラ全員を時代劇の人として演出をしなければいけなくて……。当然僕一人では大変だったのですが、過去に小劇場の劇団を作ったことがあったので、その劇団で知り合った役者さんにエキストラさんへの指導役として来てもらい、一晩かけてお芝居の練習をして、なんとか成功させることができました。さらに、『逃走中』を実際にやってみたいという想いからリアル脱出ゲームに関わるようになって。リアル脱出ゲームでは要所要所に役者さんを使っているので、お客様と役者さんがコミュニケーションを取りながら、ロールプレイングゲームみたいな感じで物語を進めていくところが『逃走中』と似ていたりもします。タイアップもので演出する際にも、役者さんにはキャラクターの性格になってもらうようにこだわってきました。そういった演出の経験や、タイアップする際のノウハウは、2.5次元の現場でも活かされているのかなと思います。

💬劇団をやられていたとのことですが、どういった経緯で旗揚げされたのですか?

劇団は思いつきで始めたんです(笑)。最初は何も分からなくて、“舞台監督と美術さんは違うの?”というレベルからスタートしました。役者さんの知り合いの舞台監督に連絡をして来てもらったりして、みんなであたふたしながら本番を迎えましたね。ですが一度やったら仕組みがわかるので、どんどん慣れてきちゃって。現場がカオスになって、緊張感がある中で仕事をするのが好きなので、1回目が一番楽しかったですね。

💬映像制作や舞台に関わる仕事の面白いところを教えてください。

舞台や脱出ゲームってどんなに稽古をしてもセリフを飛ばすことがあるし、役者さんの動きも毎回違ったり、照明や音響も人が手作業で行っているので、自分たちでコントロールができないんです。“映画は監督のもの、舞台は役者のもの”とよく言われるのですが、毎回違う“ナマモノ”であるところが舞台の良さでもあって。その反面、映像はワンカットの中で光の入り方や、映り方、お芝居の間だけでなく、観客の感じ方なども含めて、全部コントロールして作り込めるので、そこは舞台とは違う面白さかなと思います。

💬映像や舞台制作などに興味のある高校生が、今のうちに取り組んでおいた方がよいことはありますか?

映画制作や舞台プロデュースに限らず、どんな仕事をする上でも“企画書”が必ず必要になります。企画書は頭の中に思い浮かんだアイデアを言語化し、可視化できるもの。企画としてアイデアをまとめていくうちに、実際に行う上で必要なものや人、工程などが具体的に見えてくるので、それをまとめたものが企画書となります。僕は昔から、夏休みに遊ぶ計画を立てたり、文化祭で放映する映画の企画を立てるのが好きだったんです。なので、高校生の皆さんはぜひ長期休暇の時の遊ぶ企画を立ててみてください。例えば、“どこまで歩いて行って、ここからバスに乗る、親に心配をかけないようにここで連絡を入れる”といったように、安全面もちゃんと考慮した企画書をぜひ作ってみたら面白いと思いますよ。きっと企画を考えている間は1人でも、それに人を巻き込んでいくという経験がとても楽しい思い出になります。そして映像や舞台に興味がある人は、実際に自分で作品を作ってみてください。自分で作ってみることが何よりもいい経験になると思います。

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カメラ
映画制作の仕事の際には自分たちで撮影も行うためカメラは必需品。社内には他にもたくさんのカメラがありました。実はこのカメラで撮影したある映像作品を絶賛制作中なのだとか……!?

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映画監督・舞台プロデューサー編 :【箱馬】 はこうま
カメラのフレームに人や物が収まるよう、高さを調整するのに使用する木の箱。アメリカでは“Apple Box”と言われており、その国の文化や歴史を感じられる撮影用語。

INFORMATION

映画や舞台、イベントなどの制作を行う
『株式会社PLANET KIDS ENTERTAINMENT』

【インタビュー】映画監督・舞台プロデューサー 伊藤秀隆「 映像は全部コントロールして 作り込めるところが面白い」


株式会社PLANET KIDS ENTERTAINMENT:http://pkfilm.com