【インタビュー】制服デザイナー・浅野あゆみ「相手が求めているものをしっかりと聞き、そこから考え、解決していく」

さまざまな職業で活躍する人に迫るWorker’s file。第54 回は、学校制服や体育着の製造・販売を行う株式会社トンボの浅野あゆみさん。年に100通り程の新商品を発表する制服メーカーのデザイナーのお仕事に迫ります。

【インタビュー】制服デザイナー・浅野あゆみ「相手が求めているものをしっかりと聞き、そこから考え、解決していく」

浅野 あゆみ(あさの あゆみ)
奈良県出身。大学時代、もともと興味があった洋服業界を志して就職活動をしている際に、制服メーカーである株式会社トンボの存在を知り、新卒で入社。入社後は販売部企画提案課に所属し、9年間に渡り学校への営業活動などを行う。その後デザイナー室に移り、現在は制服デザイナーとしてさまざまな制服のデザインを手掛けている。

 

相手が求めているものをしっかりと聞き、そこから考え、解決していく

 

仕事内容を教えてください。

主な仕事の内容としては大きく3つありまして、一番大きいのが商品開発です。制服のジャケットの素材や、スラックス・スカートの新しい柄を新商品として作っています。弊社のデザイナーは私含め5名いるのですが、一年に一度、新商品をお披露目する展示会があるため、そこに向けて毎年100通りくらいの新商品を開発しています。学校制服は一般のアパレルよりも耐久性や機能性が特に重視されるので、毎年新しい素材や機能がついたものを開発するようにしています。また、制服の柄なども、学校様から求められるものが時代によって変化するので、その変化を捉えながら新商品を製作していますね。あとは、新商品の発表となる展示会の運営や、制服カタログの製作なども行っています。

 

現在の仕事に就くまでの経緯を教えてください。

大学生の時に、もともと好きだった洋服に携わる仕事がしたいと思いながら就職活動をしていて、その中で制服メーカーであるトンボに出会ったんです。制服は学校のシンボルになるので長く愛されるものというイメージがありましたし、制服を見るだけで当時の思い出が蘇るというのも魅力的だなと思ったので、トンボに入社しました。入社後は販売部に所属し、実際に学校に訪問して制服を販売していました。デザイナーが開発したものを学校様が求める商品に組み替えて提案していく、“現場のデザイナー”という感じの仕事でしたね。そこで9年間仕事をして、現在のデザイナー室に移り、今は制服デザイナーとして仕事をしています。

 

制服の組み合わせにはどのような物があるのですか?

主に、ジャケットとボトムが同じ素材の“スーツスタイル”と呼ばれるものや、ジャケットが無地でスラックス・スカートが柄の“ブレザースタイル”などがあります。あとはセーラー服ひとつをとっても、被って着るセーラー服もあれば、前開きのセーラー服もありますし、選ぶものによって何万通りの組み合わせがあります。

 

学校からは、どのようなタイミングで制服を変えたいという要望があるのですか?

制服を変えるのは、単純にデザインを変えたいという要望だけではないんです。例えば、“今の制服には伝統があり、地域の人にも浸透しているためデザインは変えたくない。だけど洗濯機で洗えず手入れがしづらいので、見た目は同じで機能的にしてほしい”という希望があった時には、その要望に応えられるよう、既存の制服をブラッシュアップしていったりもしています。

 

制服のデザインをしていて面白いと感じることはありますか?

制服という括りの中でも、学校様それぞれでコンセプトが違うので、デザインも全く違うものになるという部分が面白いです。そもそも制服を作る際に、すぐに弊社を指名いただくことはまずなくて。弊社も含めた制服メーカー数社で学校様に対してプレゼンテーションをさせていただき、採用が決まるんです。制服を作る時には学校様のことをとことん調べ、“こういう意味を込めた制服にしました”という想いをお伝えして、それが伝わった時に初めて採用していただけるんですよね。そのため、学校様の歴史やコンセプトなどはしっかりと調べるようにしています。

 

御社ではジェンダーレス制服も作られていますが、制作に至るまでの経緯を教えてください。

制作を始めたのは2015年頃です。以前から女子用のスラックスというアイテムはあったのですが、2015年に文科省から『性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について』という文書が公表されて。その辺りから関西地区の公立中高の学校様からジェンダーレス制服の相談も増えはじめたため、制作に至りました。

 

開発をされる際に、苦労された点はありますか?

最初は当事者の方がどういった悩みを持たれているのかというのもわからなくて、想像できない部分もあったので、実際に当事者の方に話を聞きながら商品開発を進めていきました。その中で、男女の体型の違いで着づらいという点や、見た目が好ましくないという意見を聞きながら、徐々に改良していきました。

 

ジェンダーレス制服を作る際に気をつけていることはありますか?

弊社ではポイントを3つ設けています。制服のアイテムの選択肢を増やすこと、性差を感じさせないデザインにすること、多様な性を受け入れるための環境づくりです。この3点はいつも心がけていますね。

 

仕事をする上で持たれているポリシーはありますか?

相手の意見にしっかりと耳を傾けることです。建前ではなく本音を聞き出せる雰囲気づくりという点は心がけていますね。こちらの意見を話すよりも、まずは相手が求めているものをしっかりと聞き、そこから考え、解決していくことで、より良い制服を提案していきたいと思っています。

 

仕事をする中でのやりがいを教えてください。

お客様に「この制服にして良かった」と言っていただけることです。今は開発チームにいるので、お客様とやり取りをする機会は減ってしまったのですが、良い商品がお客様のもとに届くことを想像して仕事に励んでいます。

 

高校生にメッセージをお願いします。

自分は何がしたいのか、何をしている時が楽しいのか、将来どういう自分でありたいのかということを想像する時間を、高校生の時から少しでも作ってほしいです。あとはいろいろなことにチャレンジして、たくさんの人と関わることをおすすめしたいです。人との関わりは、自分の経験となり財産となるので、課外活動やアルバイトなど、ぜひたくさんのことにチャレンジしてみてください!

 

 

お仕事言葉辞典 制服デザイナー 編

【モデルチェンジ】 もでるちぇんじ
学校制服が変わること。主に見た目のデザインがガラリと変更されること。「◯◯学校がモデルチェンジする」などといった形で使われ、頭文字をとって”MC(エム・シー)”と言い表すこともある。見た目はそのままに、機能性をアップさせることは“ブラッシュアップ”と呼ぶ。

 

お仕事道具見せてください!

【インタビュー】制服デザイナー・浅野あゆみ「相手が求めているものをしっかりと聞き、そこから考え、解決していく」

制服デザインに 欠かせないメジャー
新商品を開発する際に使用するメジャー。ジャケットなどをデザインする際、ベースとなるジャケットの形から、丈を何cm伸ばすかなどを考える時にメジャーを使って計測し、確認をするそうです。

 

INFORMATION

浅野さんが制服デザイナーを務める会社

【インタビュー】制服デザイナー・浅野あゆみ「相手が求めているものをしっかりと聞き、そこから考え、解決していく」

公式HP:http://www.tombow.gr.jp
Instagram:tombow_uniform