【インタビュー】高卒就職支援会社代表・吉田優子「高校卒業後の選択肢には“学ぶ”と“働く”という2つがあることに気づいてほしい」

さまざまな職業で活躍する人に迫るWorker’s file。第55 回は、高校生の就職支援を行う株式会社アッテミーの代表、吉田優子さん。高校生が意思ある進路決定ができるよう、さまざまな角度から手助けを行う吉田さんに迫ります。

【インタビュー】高卒就職支援会社代表・吉田優子「高校卒業後の選択肢には“学ぶ”と“働く”という2つがあることに気づいてほしい」

吉田 優子(よしだ ゆうこ)
愛知県出身。高校生の時に「良い大学に入って良い企業に入る」という社会の仕組みに疑問を抱く。上智大学総合人間科学部教育学科を卒業後、一般企業を知るために楽天株式会社に入社。楽天株式会社を退社後、一般財団法人大阪労働協会に入職し、公立高校の進路指導職を務める。求人票や一人一社制など、高校内の就職活動のルールに戸惑い、高校生の進路指導サポートをするため、2019年に株式会社アッテミーを設立。現在は、同企業の代表として、インターンシップなどを活用し、高卒生の就職支援に尽力している。

 

高校卒業後の選択肢には“学ぶ”と“働く”という2つがあることに気づいてほしい

 

仕事内容を教えてください。

アッテミーの事業には二つの側面があります。一つが、高校生が企業にインターンシップに行くためのマッチングサイトの運営です。そしてもう一つは、高卒生の採用を考える企業に対してコンサルティングを行っています。就職後も高卒生が長く企業に定着できるよう、職場環境のアドバイスなどをさせていただいています。

 

アッテミーを起ち上げるまでの経緯を教えてください。

私が通っていた高校では4年制大学に進学する子がほとんどだったので、授業内容がセンター試験対策のようなものばかりで。有名な大学に入って有名な企業で働くのが良い人生という考えに違和感がありました。高校3年間は、そんな気持ちも重なり全く勉強をしなくて(笑)。だけど私は学校の先生になりたかったので1年間浪人をさせてもらい、4年制大学の教育学科に進学をしたんです。そこで教育実習をした時に、自分自身が企業を知らなければ社会のことを教えられないと思い、民間企業を経験するために楽天に入社し、ネットショプのオーナーさんと関わる仕事を経験しました。その中で、学歴などは関係なく自由に働けるということを改めて感じた一方で、高校生がなんとなく進学をするのがもったいないなと思ったんです。そして私は楽天を退職して、公立高校で進路指導業務をすることになりました。その時に初めて高校生の就職活動に関わったのですが、A4サイズの求人票で就職先を選ぶという就職活動の形を目の当たりにして。こんなにIT技術が発達しているのに、求人票一つで応募をさせることがショックだったんです。そもそも多くの高校生がとりあえず進学を選ぶのは、大学卒の方が働く時の選択肢が多いからだと思いました。だから、高校生の段階で選択肢を作りたいと思い、さらに1年間進路指導の職を続けて。その中でインターンシップを手掛けたりということを細々と続けていたら、高卒生の人材を取りたいという企業からの相談が増えてきたので、アッテミーを起ち上げました。

 

ご自身の高校時代の考えと、今の高校生の考えはマッチしますか?

マッチしている子もいます。アッテミーでも、毎年数人高校生でインターンに来てくれる方がいるのですが、初めてウチの会社でインターンをしてくれた高校生は私立高校の3年生で、附属大学に進学するのが当たり前という学校に通っていて。将来はどのような企業で働くべきなのか、そのために大学のどの学部を選ぶべきなのかということを考えるためにも、自分が興味のある業界の会社で経験してみたいという子でした。大学の附属校に通っている自分の周りには、とりあえずその大学に進学すれば良いという人ばかりだけど、将来的に自分が価値ある人間になっていくにはどういった分野で自分を磨けばいいのかということを考えるためにも、インターンをしてみたいという方でしたね。あとは、通信制の学校に通っていた方だと、行きたい大学と学部が決まっているが、それ以外に進学したいところはない。だからもしそこに落ちたら、高校を卒業してすぐに、大卒生と肩を並べてバリバリ働かせてくれる企業はないかという相談に来てくれて。結局その方は志望する学部に落ちてしまったのですが、彼女が志望していた企業は大卒生の中でも人気の企業だったので、私の力不足でその方に紹介することができなかったんです。それが私はすごく悔しくて。大手の企業が、高校生にもフラットに門を開けてくれていたら、彼女はチャレンジしたんだろうなと思います。やっぱりまだ日本には、企業をはじめ、先生や親御さんの中にも、大卒で就職をするという考えがあると思うので、そういった考えがキャリアの選択肢を狭めているなというのは感じていますね。

 

ご自身が高校生の時と比べて、今の高校生にはどのような印象を持たれていますか?

羨ましい(笑)! IT環境が普及しているので、自分で動き出せば地方にいても都心の人と交流することができますし、日本にいても世界中の人と繋がることができます。ITというものを使えば、世界を舞台にいろいろなものにチャレンジできるというのは、すごく羨ましいですね。あとは、本質を見抜く感性がすごく研ぎ澄まされているなと感じることがあります。日本社会も今、SDGsなどいろいろなことに取り組んでいますが、そんな中でも高校生世代が一番世界基準に近い感覚を持っていると思います。だから、その感覚をインターンや就職で、日本の企業や大人に還元してみてほしいです。高校生の皆さんが大学を卒業して就職する4年間、7年間を待たずに、今の皆さんの感覚を、日本社会にどんどんアウトプットしてほしいなと思います。

 

仕事をする中でのやりがいを教えてください。

“高校生のキャリアの在り方”に共感してもらった時ですね。私は皆に高卒就職をしてほしいと思っているわけではなく、なんとなくで進路や将来を決めないでほしいんです。高校卒業後の選択肢には“学ぶ”と“働く”という2つがあることに気づいてほしいんですよね。選択肢や選ぶ権利があるということを知ってほしい。その上でどちらを選ぶかを決めてほしいんです。ただ、それを選択するためには判断基準となる経験が必要だと思うので、私たちがインターンシップという形でさまざまな経験を提供できたらいいなと思っています。

 

高校生にメッセージをお願いします。

進路に関して人任せにしないでほしいです。親や先生、世の中の価値観に将来を委ねずに、自分で意思決定をしていくことが、今の時代にはすごく大事だと思います。ただ、意思決定をすることは簡単なことではないので、判断をするための基準作りでインターンシップに参加したり、学校行事に打ち込んだり、一歩踏み出せることから始めてみてください。その一歩の積み重ねが今後の人生の道を切り拓いていくと思うので、日常とは違う小さな体験を積み重ねてほしいと思います。

 

 

お仕事言葉辞典 高卒就職支援会社代表 編

【早活人材】 そうかつじんざい
高卒や大卒等の学歴は関係なく、早期からビジネスや地域活動を始めている人のこと。主に10代の人々がその対象となり、学校外でも活動を行う行動力のある人材を指す。中学生・高校生・大学生という括りではなく、“早活人材”という括りで見ることで、若者のキャリアの選択肢を増やす。

 

お仕事道具見せてください!

【インタビュー】高卒就職支援会社代表・吉田優子「高校卒業後の選択肢には“学ぶ”と“働く”という2つがあることに気づいてほしい」

スニーカー、 スマートフォン
企業や学校への営業活動では移動が多いため、足元は常にスニーカー。スマートフォンではリフレッシュも兼ね、高校生との話題づくりになるようなコンテンツなどを楽しんでいるそうです。

 

INFORMATION

吉田さんが代表を務める会社
【インタビュー】高卒就職支援会社代表・吉田優子「高校卒業後の選択肢には“学ぶ”と“働く”という2つがあることに気づいてほしい」

公式HP:https://atteme.com

高校生向けインターンシップマッチングサイト「ATTEME」:https://app-atteme.com