【インタビュー】Job master VOL.06 米穀店三代目店主 五ツ星お米マイスター 川口 文彦

さまざまな職業で活躍する方に迫るJob master。第6回目は日本人には欠かせないお米を販売する米穀店。家業を継ぎ、五ツ星お米マイスターの称号を得た米穀店の川口さんに迫ります。

―お仕事の内容を教えてください。
まずは仕入れです。卸業者や農家からお米を買います。ウチが仕入れた段階では玄米の状態のものがくるので、それを精米していきます。米屋の仕事っていうと販売することはもちろんなのですが、精米が主な仕事になりますね。

―家業を継がれたキッカケは?
大学を卒業して一度一般の企業に入って、1年くらいでその会社を辞めたんです。それから1カ月くらいハワイに行っていたのですが、母親が倒れて日本に帰ってきて。当時、店に立っていた兄がお店を辞めると言うので、じゃあ僕がという形で継ぎました。もともと継ぐ気はなかったんですけど、せっかくこの家に生まれたのでお店を続けたいと思ったんですよね。でも本当に本腰を入れ始めたのはお米マイスターを取ってからはさらに本腰を入れ始めました。

―お米マイスターを取るまでの経緯を教えてください。
30歳手前くらいに、若い米屋だけを集めた会に呼ばれたんです。その仲間とまずは三ツ星のお米マイスターを取ろうという話になって、三ツ星のお米マイスターを取ったんですね。そのあと別の会に行ってみたら、9人の会員中7人が五ツ星お米マイスターだったので、取った方がいいと思って取りに行きました。五ツ星は全部対面の面接試験で、お米の品種を当てるものから、サンプルよりおいしいブレンド米を作るというものまで、結構難しかったですね。お米マイスターを取ってからは、こういう称号を持っているという自分への自信に繋がりました。お店を継いだ最初の頃は自分よりお米に詳しいお客さんがいたりして、それが恥ずかしくて勉強を始めたんですけど、五ツ星お米マイスターを取ってからはやっぱり自分の言うことに自信がついたし、以前よりも信憑性を持たすことができたと思います。

―米穀店としてのやりがいは?
お勧めしたお米を買ってもらえるということが最初。それでそのお米を食べてもらって、次にお店に来た時に「おいしかった」って言ってもらえるのがやっぱり一番のやりがいだと思います。

―米穀店として苦労する点は?
スーパーを相手にしなければならないところですかね(笑)。スーパーで安くお米が手に入る今、ウチみたいな米屋は何か付加価値がなければいけないんですよね。自分の知識を持ったうえでお客さんにお勧めできることも付加価値の一つだと思うし、あとはやっぱり店頭で精米できるっていうのも、米屋の付加価値になるんじゃないかな。精米って簡単そうに見えるけど実はすごく難しいんです。お米の品種によって皮の厚さとかも全然違うし、例えばコシヒカリ一つをとったとしても北は東北のものから南は九州のものまで幅広くあるので、お米の質感は全然違ってくるんです。その微妙な違いを見極めて精米するには、それなりの経験が必要になってきます。

―家業を継ごうか迷っている高校生に伝えたいことは?
僕自身も最初は客商売が向いているとは思っていなかったんですけど、始めてみると役者になるというか、米屋を演じるようになっていて。そうすると自分で知識を入れなければならないから勉強するんですけど、それをやっていくうちにどんどん楽しくなってくるんですよ。興味がないことでもいろいろなことを知っていく内に興味が湧いてくることもあると思います。

―全国の高校生に伝えたいことは?
何でもいいから一生懸命やってみてほしいです。部活なんて特に高校生の内しかできないじゃないですか。何か今、熱中できることがあるなら、それを本当に一生懸命やって仲間を増やしてほしい。それが財産になるんじゃないですかね。

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<米穀店・川口文彦を知る3つのコト>

1.仕事に欠かせない前掛け
仕事に欠かせない道具の1つ。破けてしまうため、1つのものを長く使うのは難しいのだとか。
2.巨大な精米機
精米のすべてをこの1台で済ますため、お店の隣の作業場からお店の中まで伝うほどの大きさ。
3. お米マイスターの認定証書
五ツ星お米マイスターを取った時の認定証書。お米マイスターは3年に1度資格を更新するそうです。