第114回のWorker’s fileは、細菌学者の野口英世が考案した医薬品「パプラール」を日本で唯一製造し、薬局や製薬会社に卸している株式会社 東洋厚生製薬所・代表取締役社長の輪嶋将一さん。異業種から製薬業界に転職し、事業を支える輪嶋さんに迫ります。

東京都練馬区出身。大学在学中に経営学を学び、大学卒業後にエンタメ関連のイベント会社を起業。東日本大震災によるイベント自粛を受け経営が傾き、2012年に廃業。同年、株式会社 東洋厚生製薬所の代表だった大叔父が入院したことを機に、営業部長として入社。2018年に代表取締役社長に就任し、現在に至る。
エンタメ業界から製薬業界へ異業種への転職。
悔しかった経験を糧に今も学び続ける。
—輪嶋さんは、YOUTH TIME JAPANの前進であるJSBN(Japan School Broadcasting Network)にアルバイトとして携わられていたそうですが、当時はどのようなことをやられていたのですか?
JSBNを発行していたシップに、高校生の頃から通っていて、そのままアルバイトとして働き始めました。アルバイトをしていた頃は、冊子や校内放送CDの発送作業や必要に応じて学校に電話をかける作業を行っていました。また、学生向けのイベントをやる際の会場のリサーチや、交渉なども担当しており、事務局のようなこともしていましたね。その経験がきっかけで、自分でエンタメに関わる会社を起業したいと思うようになり、大学卒業後に起業をしました。
—株式会社 東洋厚生製薬所の事業について教えてください。
弊社では日本で唯一、「パプラール」の製造・販売を行っています。パプラールとは、野口英世が考案し、弊社の初代所長・石塚三郎が20年余り研究・開発した、白金(プラチナ)とパラジウムの2つが配合されている健康食品で、のど飴や清涼飲料水、化粧品などさまざまな商品に利用されています。また、弊社にはクリニックも併設されており、主に呼吸器内科を専門とした自由診療も行っていますね。その中でも私は代表取締役として経営に携わっています。現在は創業から91年目を迎え、「今までの100年を これからの100年へ」をスローガンに掲げ、100年企業に向けて挑戦を続けています。
—現在の仕事に至るまでの経緯を教えてください。
大学時代は、経営学を勉強していました。いざ就職を考える時期になり、就職活動をしている友人を見ながら、明確に挑戦したいことがないまま会社に就職することに違和感を覚えて。もともとアルバイトでエンタメ業界に関わっていたこともあり、大学卒業後は友人と2人で、エンタメ関連の制作会社を起業しました。そこでは主にイベント制作をはじめ、自社媒体の開発、代理店向けのセールスプロモーションを行っていました。しかし、2011年の東日本大震災の発生後、イベント自粛のムードが流れ、決まっていた仕事が一気になくなってしまい、2012年に会社をたたむことになって。それから少し経った頃、東洋厚生製薬所で働いていた方から突然の電話で会社の危機的状況を知らされたんです。話を聞いたら、当時経営していた私の大叔父が入退院を繰り返していて、会社が立ち行かなくなりそうということでした。その頃、子どもが生まれたばかりで新たな業界への挑戦には迷いもありましたが、とにかく自分の家族と親族の経営する会社を守らないと、という想いもあり、その話を受けることにして。最初は営業部長として働くことになりました。入社した当初は、全ての商品の製造・出荷が止まっており、売上ゼロ。負債を抱えた状態からのスタートでした。そこから、積極的に産官学との連携を強化するなど、研究分野を広げることで売上を伸ばし事業再生をしました。東洋厚生製薬所が歴史がある会社であることも理解していましたし、私自身パプラールを使っていたので、これを無くすわけにはいかないという責任感がありましたね。その後2018年に代表取締役になり、現在に至ります。
—異業種への転職で苦労したことはありましたか?
入社するまで製薬業界のことを全く知らなかったので、営業の仕事をしながらとにかく勉強をしていました。営業という仕事自体は前職でも経験していましたが、エンタメ業界と製薬業界では営業の仕方が違うんです。営業マンとして関わる方も、前職では関わることのなかった大学教授や卸先の製薬会社の役員の方で。そこに全く知識のない私が行くので、当時は意地悪な質問をされることもありましたね。そこで何度も悔しい経験をしたので、それからもずっと継続して製薬業界や専門知識について図書館に行ってアナログに勉強していました。営業の仕方も、前職の時はフランクな営業をしていたので、この会社に来てからはきちんと理論を持って説明するという営業スタイルになりました。
—異業種から入社したメリットがあれば教えてください。
「こうあるべきだ」みたいな先入観がなかったのはよかったですね。全てがわからない状態から入ったので、とにかく学びが多かったです。凝り固まった考えがなかった分、柔軟に対応できたような気がします。
—仕事をする上で持たれているポリシーを教えてください。
あえて言うなら“初志貫徹”です。営業は、気持ちがブレているとあらぬ方向に話が進んでしまうことがあります。「最初に思ったことをやり通しなさい」という思いも込めて、会社の合言葉にもしているので、私だけでなく、弊社の営業スタッフ全員が意識しています。それともう一つは“一日寝かす”ということ。感情的になりすぎている時は一度寝かせて、時間を置いてから落ち着いて考えるということも大事にしています。
—パプラールの今後の可能性について教えてください。
僕自身、パプラールのポテンシャルをまだまだ伝えきれていないと思っていて、どうやったら伝えられるのかというのを日々考えています。パプラールの成分自体は、いまだに研究すればするほど新しい発見があって。パプラールの誕生から90年以上経った今も、研究すればするほど新しい発見が見つかるので、パプラールは可能性の源泉ですね。研究するほど新しい結果が得られるというのはやりがいにもなってきますし、それを今後、消費者に伝えていくことが僕の使命だと思っています。
—高校生にメッセージをお願いします。
諦める理由を探さないでほしいです。限界を自分で決めてしまったり、自分には向いていないということを理由にして諦めてしまうと、その時点でそこから先に進めなくなってしまうんです。だからこそ、諦める理由を探さないでください。特に若いうちは、やりたいことにはしっかりと挑戦してほしいなと思います。


『運命を拓く』中村天風
講談社文庫 770円(税込)
俳優の柴崎コウがTV番組でオススメしていて読んだ、中村天風の哲学書。悩みや迷いがある時や、自身のポリシーでもある初志貫徹に立ち戻りたい時に読むと、ヒントを与えてくれる1冊だそうです。

製薬会社経営者編
【パプラール】 ぱぷらーる
野口英世が考案、石塚三郎が研究・開発。白金(プラチナ)とパラジウムの2つが配合された健康食品。のど飴や清涼飲料水、化粧品など、さまざまな商品に利用されている。
輪嶋さんが代表取締役社長を勤める

