立正大学淞南高校 eスポーツ部「もし昔の自分に声をかけてあげられるなら、「eスポーツ部は、良い自分に成長させてくれるよ」と教えてあげたい」

全国の高校生の活動をお伝えする“全国高校生NEWS”。
今回は、島根県初のeスポーツ部として2021年に創部され、eスポーツ大会に出場しながら、自分達でeスポーツ大会を企画・開催している立正大学淞南高校のeスポーツ部です。

立正大学湘南高校 eスポーツ部「もし昔の自分に声をかけてあげられるなら、「eスポーツ部は、良い自分に成長させてくれるよ」と教えてあげたい」

◆一つ一つの仕事が、別の新しい仕事に繋がっていく

世界中で注目を集めている“eスポーツ”。“eスポーツ”とは、電子機器を用いて行う娯楽、競技、スポーツ全般を指す言葉です。島根県にある立正大学淞南高校は、2021年にeスポーツ部を創部。創部から5ヶ月で全国大会出場を果たし、2年連続全国大会ベスト16に入賞するなど、活躍が注目されている学校です。
主な活動は、大きく分けて2つ。ひとつはeスポーツ大会への出場です。主に、高校eスポーツ選手権大会(高e)への出場を目指し、練習しています。チーム戦はひとりでプレーするのとは異なり、仲間との意思疎通が重要です。チームリーダーの村中くん(2年)は「チームワークをよくするためにも、先輩後輩関係なくコミュニケーションをとっています。普段から敬語ではなく、砕けた言い方で話しているので、自然と意見も言い合える良い関係を築けていますね」と笑顔で語ります。
二つ目は、部員主体のeスポーツ大会の開催とその運営。創部5ヶ月で全国大会ベスト8という成績を残したeスポーツ部でしたが、その一方で、“自分達は本当にすごいのか”と思うようになったそうです。そこで考えたのが、自分達でeスポーツ大会を開催してみることでした。全国大会で惜しくも決勝ブロック進出を果たせなかった立正大学淞南高校を含めた5位〜16位の学校を集めて大会を開催したらおもしろいのではという考えが浮かんだ頃と同じタイミングで島根県がチャリティのeスポーツ大会を開催することになり、縁あって立正大学淞南高校eスポーツ部が運営に参画させてもらえることになりました。全国大会ベスト16以上の強豪校が出演する大会の運営をした経験は、プレイヤーとしての技術のほかにも学ぶことが多かったそうです。eスポーツ部顧問の畑山先生は「大会では初めて配信にチャレンジし、外部の大人の方々に配信の方法などを教えてもらいながらイチから生徒が挑戦しました。生徒にとっては初めてのことで、いろいろと質問をしているんですけど、毎回同じことを質問していたんです。それである時ひとりの生徒が、『いつも同じこと聞いてるわ、やばい!』って言って、私も内心『そうそう!』って(笑)。その後から生徒も質問する際はきちんと考えてから質問するようになったんです。その時に、私がeスポーツ部を通して部員にやらせたかったのは、こういうことだったのかなって思いました」と語ります。

立正大学湘南高校 eスポーツ部「もし昔の自分に声をかけてあげられるなら、「eスポーツ部は、良い自分に成長させてくれるよ」と教えてあげたい」

立正大学湘南高校 eスポーツ部「もし昔の自分に声をかけてあげられるなら、「eスポーツ部は、良い自分に成長させてくれるよ」と教えてあげたい」

立正大学湘南高校 eスポーツ部「もし昔の自分に声をかけてあげられるなら、「eスポーツ部は、良い自分に成長させてくれるよ」と教えてあげたい」

立正大学湘南高校 eスポーツ部「もし昔の自分に声をかけてあげられるなら、「eスポーツ部は、良い自分に成長させてくれるよ」と教えてあげたい」

そして立正大学淞南高校では、eスポーツ部が主催となり全校生徒対抗の『eスポーツ大会』を行うようになりました。そこには畑山先生の思いもあります。「大会には、大会に出場する表舞台とそれを支える裏方があります。これって全部一つ一つが仕事になっていて、別の新しい仕事に繋がっていると思うんです。その経験が高校生の学びとキャリアアップに繋がっていくと思います。自分で考えて企画できる、そういう経験を将来は全く違う業種でもいいので活かし、活躍する人になってくれたら嬉しいですね」
eスポーツを通じて、自分達の考える力をつける。立正大学淞南高校eスポーツ部では、部員たちの将来を見据えた活動をこれからも続けていきます。

■部員4名のeスポーツ部をまとめるチームリーダー村中くんにインタビュー
立正大学湘南高校 eスポーツ部「もし昔の自分に声をかけてあげられるなら、「eスポーツ部は、良い自分に成長させてくれるよ」と教えてあげたい」

—eスポーツ部に入部したきっかけを教えてください。
昔からゲームをするのが好きで、立正大学淞南高校に通っていた知人から、この学校にeスポーツ部があることを教えてもらいました。その時は中学生でeスポーツに馴染みがなかったのですが、eスポーツについて調べるうちに興味が湧いてきて。その時に、学校生活で少し悩んでいたこともあり、この学校に進学して寮生活をしながら興味のあるeスポーツに挑戦してみたいと思い入部しました。

—eスポーツの魅力を教えてください。
ただゲームをするのではなくて、部員たちの仲を深めていき、力を合わせて戦うところが魅力だと思います。僕たちが出場しているタイトルの『ロケットリーグ』は、チームワークが勝利の鍵になっていて。個人でどんなにすごい技を持っていても、チームの連携がうまくいかないと勝てないこともあるので、そこがeスポーツならではの面白いところだと思います。

—eスポーツ部に入部して、どんな変化がありましたか?
積極的にコミュニケーションをとれるようになりました。中学時代はコミュニケーションをうまく取れずに悩んだ時期もありましたが、その時と比べると、学校生活でも自分から率先して発言できるようになったところが、eスポーツ部に入って学び変化があったことだと思います。最初、eスポーツ部について“どうなんだろうな?”って疑問に思ったこともありましたが、もし昔の自分に声をかけてあげられるなら、「eスポーツ部は、良い自分に成長させてくれるよ」と教えてあげたいです。また、イベントや大会で知り合った他校のeスポーツ部の人たちともオンラインで交流をしています。eスポーツだと住んでいる場所は関係なく、オンライン上でいろんな人とコミュニケーションを取れる、そういった楽しさがありますね。

—今後の目標を教えてください。
チームとしての目標は、第6回全国高校eスポーツ大会で優勝を獲得することです。個人的には、他校のeスポーツ部の人やさまざまな方々との交流をもっと深めていきたいです。eスポーツ部の活動を通して「グロカワアート」を手がけている画家の久保和稀さんに僕たちのチーム名『GEEK JAM』をもとにデザインをしてもらう機会がありました。イベントに参加することで、ゲームとは関係のない方々とも交流ができて、一緒にゲームをしたりできるのが面白いなと感じています。そのため、今後もさまざまなジャンルの方々と関わりを持っていきたいです。

■eスポーツ経験ゼロから顧問をつとめることになり、現在では講演まで行っている顧問 畑山先生にインタビュー
―eスポーツ部を創部することになった経緯を教えてください。
eスポーツ部を作るきっかけは校長が作りたいというところからスタートしているんです。数年前から校長の中では構想があったみたいなんですけど、お金もかかることなので。そんなとき、東京のサードウェーブという会社がeスポーツ部創部のプログラムを打ち出し1年間無償で回線とパソコンを貸し出しますよという支援をしていることを知り、それに申し込みeスポーツ部の創設に至りました。

―畑山先生が顧問になられたのはなぜですか?
実は僕自身、eスポーツを全くやったことがなかったんです。元々は12年間陸上部の顧問をやっていましたが、部員がいなくなるタイミングで教頭から「eスポーツ部を作るから顧問にならないか?」と話を受けました。「教頭、eスポーツって何ですか?」と聞いたら「知らん!」と言われて(笑)。“これから知らないものに挑戦するのか”というスタートでした。顧問になってからまずやったことは部室作りです。他の学校の状況を聞くと大体パソコン室の隅にあるとか、空き倉庫みたいなところを掃除して使ってくださいって感じのところが多いんですけど、うちは研修室だったところの壁紙を貼り替えて部室として使わせてもらっています。椅子とか机もeスポーツというイメージ先行で選びました。わからないからこそできあがった部室かなと思います。これはやっていく中で気づいたんですが、eスポーツをやっている子はいろいろな不安を抱えている子が多かったんです。そのため、認めてもらえる場所を作ってあげたいという想いがありました。eスポーツ部はすごくお金がかかっているように見えますが、補助金や無償で機材を借りられるプログラムを利用し、使えるものは再利用する等、なるべくお金をかけないようにやっています。

―畑山先生から見たeスポーツの面白さは何ですか?
チーム戦略を立てていたときに仮定していたことが実際に起きると楽しいなと思います。あとはできないことができるようになったときの達成感。ゲームって基本1人でやる時は声も出さずに黙々とやるじゃないですか?でもeスポーツではお互いに意思疎通をしないといけないんです。それってすごく難しくて。そのためのチームリーダーを育成していかないといけないんです。今となってはチームリーダーが必要とわかりましたが、始めた当初はそれすらわからなくて。本当に“よくわからない。何をしたらいいのかわからない”状態でしたね。以前、「俺はこんなゲームやりたくない」って言ってくれた男子生徒がいて。その時に、“ゲーム部ではなく、ちゃんとeスポーツ部になっている証拠だな”って実感できました。ゲーム部ではないから、やりたくなかったら部活をやらなくていいという線引きができた出来事でしたね。

―立正大学淞南高校eスポーツ部の強みは何ですか?
先輩と後輩の仲が良いことですね。チームメイトになるのだから、気を遣って言いづらいとなってしまうと試合にも影響してしまうので。試合は本気がいいと思うので、僕が参加するときも、生徒とフラットな感じでプレーしています。

―今後の目標について教えてください。
eスポーツ部としては、全国大会で優勝することです。もっと大きいことを言えば、ここを卒業した生徒がいろんな業種で活躍してくれるといいなって思っています。「立正大学淞南高校出身の子はいいよね」って言われるようになったら嬉しいです。eスポーツ部だからといって、特にプロなってほしいとは思っていなくて。ここで経験したこと活かして、全然違う業種でもいいので活躍してもらえたらいいなぁと思っています。

立正大学湘南高校 eスポーツ部「もし昔の自分に声をかけてあげられるなら、「eスポーツ部は、良い自分に成長させてくれるよ」と教えてあげたい」

立正大学淞南高等学校
島根県松江市にある高等学校。生徒は「心も高く 身も健やかにを」を校訓に知育、徳育、部活動の3つを柱として学校生活を送っている。個々の個性を伸ばす教育を行い、山陰唯一の大学付属校として進路指導や大学との情報交換をし、キャリアアップに関しても時間を設け、一人一人が主役となれる多様な講座も充実している。
HP:https://www.shonangakuen-h.ed.jp