【インタビュー】宇宙事業開発 鈴木章互「宇宙は夢のある産業。働きながら最先端の仕事ができたら楽しいだろうなと思った」

さまざまな職業で活躍する人に迫るWorker’s file。今回は、企業や大学の衛星の打上げに携わる鈴木章互さん。文系出身の鈴木さんが宇宙商社Space BD社に入社した理由や、働いて初めて知ったという宇宙の話などについて聞きました。

【インタビュー】宇宙事業開発 鈴木章互「“宇宙は夢のある産業。働きながら最先端の仕事ができたら楽しいだろうなと思った”」

鈴木章互(すずきしょうご)
東京都出身。成城学園高等学校を経て早稲田大学国際教養学部に入学。卒業後、大手総合商社に入社し、鉄鋼業界における事業投資先管理や、欧阿中東、西南アジア、豪州への輸出・三国間取引に従事。その後、半導体業界にて原料となる化学品の安定調達にも取り組むなど、グローバルに多くの経験を重ねてきた。現在は、宇宙商社であるSpace BD株式会社で衛星の打上げに携わっている。

 

◆宇宙は夢のある産業。働きながら最先端の仕事ができたら楽しいだろうなと思った

仕事内容を教えてください。

Space BD社は、宇宙に関するさまざまな事業を行っています。具体的には、お客様の人工衛星の打上げサービスや、国際宇宙ステーションを活用した実験サービス、企業における宇宙を利用したブランディングを検討するための支援、地域産業を盛り上げる事業などになります。その中でも私は、お客様の衛星を宇宙に打上げるための仕事をしています。衛星打上げの相談をいただいてからまず行うのは、お客様のミッション(打上げ目的)・衛星のサイズや打上げ軌道などのヒアリング、それらを踏まえた対応するロケットや打上げ手段の検討。その後、お客様の予算感も踏まえた価格提示や交渉となります。さらに実際に打上げるとなると国への申請やロケット搭載のための技術調整をする必要があるのでその過程までバックアップしています。

 

衛星の打上げをしたいという方にはどういった方がいるのでしょうか?

企業や大学がお客様になります。さらにどちらかというと大学の方が多いですかね。大学からの相談が多い理由は2つあります。1つ目は、学生がエンジニアリング能力を身につけるために人工衛星を作る経験をさせるため。2つ目は、科学ミッションを研究するという目的があります。例えば、宇宙にどれくらいの放射線が存在するのか、宇宙の天気は今後どうなっていくのかを測るなどといった研究に活用されています。衛星を打上げている期間は、衛星の重量や軌道によってさまざまで、高度が高ければ高いほど地球からの距離が遠くなるので重力がなくなり長く飛んでいられるんです。弊社が普段取り扱っているものだと、5〜6年前後飛んでいます。

 

現在の仕事に就くまでの経緯を教えてください。

大学卒業後は総合商社の鉄鋼業界へ進み、5年弱勤めたあたりで転職を考えて。これから宇宙はビジネスとして大きくなる業界だろうなと考え、宇宙産業で働いてみたいと思うようになりました。そこから“宇宙”というワードで検索したのですが、理系に強い人材を求めている会社が多かったので、今度は“宇宙・文系”で調べて、その時に最初に出てきたのがSpace BDでした。入社するにあたって、深く業界研究をしたり、どんなことをやっているのかを調べたりは特にしませんでしたね。ただ、宇宙は夢のある産業だと思いました。もし大きくならないにしても、未知なことはたくさんある。そういった業界で働きながら最先端の仕事ができたら楽しいだろうなと思いました。

 

宇宙業界に足を踏み入れる上で勉強したことはありますか?

特定の勉強期間がある訳ではないのですが、仕事外の時間で宇宙に関する本を何冊か読んだりはしました。あとは何十年も宇宙業界にいたベテランのエンジニアの方が社内にいらっしゃるので、そういった方にもいろいろなことを教えてもらいましたね。すぐ理解できることもあればいまだに理解できないこともあります(笑)。

 

働いてみて初めて知った宇宙の話にはどんなものがありますか?

“微小重力”という言葉を知っていますか? 私自身、宇宙は無重力だと思っていましたが、高さや軌道によっては、少し重力がかかっている場所があるんです。その空間は“微小重力”となります。これは、この業界で働いて知った知識の一つですね。私はもともと宇宙に関する知識がないので、働く中で発見することが多くて。お客様のミッションを聞き、宇宙の特性と照らし合わせて、できる・できないを判断しないといけないのですが、自分で判断するのは難しいんです。その時は、社内のエンジニアに「こういうミッションはできますか?」と聞くと「こういう理由があるからできないです」などと教えてもらえるので勉強の日々ですね。

 

仕事をする上で持たれているポリシーはありますか?

本当の課題はどこにあるのか、どうすれば解決できるのかというのは意識したいなと思っています。忙しさにかまけて目の前の業務をこなすだけになってしまわないように、自分で意識して考えを巡らす時間を作るようにしています。

 

この仕事のやりがいを教えてください。

やっぱりお客様の衛星が打ち上がった時はやりがいを感じますね。衛星の開発遅延があったり、さまざまなトラブルに直面することもあるのですが、社内のメンバーやお客様と交渉・折衝しながら最終的に打ち上げられた時は嬉しいです。

 

宇宙に関わる仕事の魅力を教えてください。

宇宙産業は産業自体が日々大きくなっていくので、働いている人たちがイキイキしている印象です。業界自体が、“みんなで協力して大きくしていこう”とポジティブに考えているところが魅力だと感じます。ビジネス的な部分ではなく宇宙そのもので見ると、いまだに知らないことがたくさんあるので、そういった情報に日々触れられる機会があるのは大きいと思います。

 

宇宙に興味がある高校生にメッセージをお願いします。

宇宙に興味がある人は、興味をとことん突き詰めて学んでもらいたいですね。私自身、高校時代に宇宙の勉強をしていたわけではありませんが、物理や工学を勉強しておくとプロジェクトの理解を深められるのではないでしょうか。今はまだ、学んだことが将来役に立つかわからなかったとしても、いつか役に立つ場面がくると思うので学び続けてもらえたら嬉しいです。

 

お仕事言葉辞典 宇宙事業開発編

【ローンチ】ろーんち
ロケットを“打上げる”という意味。「L-○(読み方は「エルマイナス○」)」で、意味としては「ローンチまであと◯日」といった使い方がされる。ビジネスシーンでの“ローンチ”は、新サービスを開始することなどを指すため意味は異なる。

 

お仕事道具見せてください

【インタビュー】宇宙事業開発 鈴木章互「“宇宙は夢のある産業。働きながら最先端の仕事ができたら楽しいだろうなと思った”」

打ち合わせに持っていくPC、メモ帳、イヤホン
出張が多い鈴木さんは、移動中でも手が塞がらずに電話に出られるようにAirPodsを愛用。打ち合わせの時にはPCを使用するそうですが、考えを整理しながらメモ帳に書きこむ作業も好きだそうです。

 

INFORMATION

鈴木さんが勤める宇宙商社 Space BD株式会社

【インタビュー】宇宙事業開発 鈴木章互「“宇宙は夢のある産業。働きながら最先端の仕事ができたら楽しいだろうなと思った”」https://recruit.space-bd.com