【インタビュー】メディカルイラストレーター 荒井敬子「イラストにすることで情報を理解するための時間を短縮できる」

さまざまな職業で活躍する人に迫るWorker’s file。今回は、株式会社メディックメディアの荒井敬子さん。医療・医学関係のイラストを専門的に描く職業、メディカルイラストレーターに迫ります。

【インタビュー】メディカルイラストレーター 荒井敬子「イラストにすることで情報を理解するための時間を短縮できる」

荒井敬子(あらい けいこ)
千葉県出身。看護師を志し、聖路加看護大学(現・聖路加国際大学)看護学部 看護学科に進学。卒業後看護師として約1年間従事し、その後保健師、フリーのイラストレーターを経て、2016年、メディカルイラストレーターとして株式会社メディックメディアに入社。現在は医学系編集部に所属し、チーム医療を担う医療人共通のテキスト『病気がみえる』シリーズの組版、イラストレーターを担当している。

 

◆イラストにすることで情報を理解するための時間を短縮できる

仕事内容を教えてください。

弊社は医学生向けに国家試験対策の問題集を作るところからスタートした会社です。その後、看護や栄養系などの職種に広がり、現在は医学知識を必要とするさまざまな職種や、それらを志す学生さんに向けて問題集や参考書、教科書などを制作しています。私が所属する部署では、『病気がみえる』という医学書のシリーズを作っており、私個人としては、その中で書籍や紙面のレイアウトを行う組版、そしてイラストレーターとしてイラストを描く仕事をしています。

 

現在の仕事に就くまでの経緯を教えてください。

堅実な職に就こうという想いからもともと大学では看護を専攻しており、看護師を目指して勉強をしていました。その時にメディックメディアが制作している書籍を使っていて、実際にメディックメディアでアルバイトもしていたんです。ただ、新卒での応募は見送り大学卒業後は一年間看護師として働きました。しかし“やっぱり本を作る仕事をしてみたい”と思い、仕事をしつつ通信制の美大で学び、途中からはフリーランスのイラストレーターとしても活動していました。その後、本格的にシフトチェンジをしようと、メディックメディアでメディカルイラストレーターの仕事をするようになりました。

 

メディカルイラストレーターとして働く方は、医療系出身の方が多いのですか?

8割は理系や医療系出身で、残りの2割は美術系出身という感じですかね。この仕事では、大学までで得た知識ってほとんど使わないというか。どちらかというと、編集者から来た原稿を読み解ける力が必要なんです。医学書を理解できる頭脳や、難しいことに心を開ける心構え、人体や生命に対する興味などがあればやっていけると思います。理解度が低いままレイアウトしたりイラストを描いても、後から修正が入ることになるので、文章を読み理解できない時には、自分で資料を探したり、編集者が添付してくれた資料を読み込んだり。編集者に直接聞きに行ったりして、わかってから描き始めることが大事になってきます。

 

イラストを描かれる際に気を付けている点があれば教えてください。

個性を出しすぎないという点は気をつけています。特に私が関わっている『病気がみえる』シリーズは複数のイラストレーターが関わっているので、肌の色や線の太さなど全て統一した規格で作っていて。だから突然リアルなタッチのイラストや、少女漫画調のイラストが出てくると読者はそこで引っかかってしまうんです。引っかかるということは、その時点で情報の厚さが増してしまうということになるので、不必要に情報を盛らないように心がけています。

 

仕事をする上で持たれているポリシーはありますか?

わからないまま描かないということですかね。編集者から来た原稿が、なんとなくそのままの絵や配置で描いて組めてしまいそうに見えることもあるのですが、実はそのままだとすごくわかりにくい仕上がりになってしまうこともあるんです。そのため、原稿はまず読者目線で読むようにしています。わからない部分があれば自分で調べたり、編集者に聞きにいって、納得ができるものを作るようにしています。

 

仕事をする中でのやりがいを教えてください。

最初の原稿を読んだ後に編集者と打ち合わせをするのですが、その時に“こういう表現や流れの方がわかりやすいのでは?”と提案することがあります。それをした際に、編集者から“それいいですね!”と合意が取れた時には、よかったなと思います。あとは、弊社では社内のイラストレーターが書籍のポップなどの広告物も作るため、自分が作った広告物や自分が作ったカバーが店頭に並んでいるのを見るとテンションが上がりますね(笑)。

 

メディカルイラストレーターにはどんな人が向いていますか?

どの職業でもそうだとは思うのですが、コミュニケーション能力が高い人だと思います。人の意図を読み取れる、自分の意図を適切に伝えられることは大切ですね。さらに意図を読み取れない時にはちゃんと聞きにいける、わからないままにしないということが大切になってきます。

 

メディカルイラストレーターという職業の魅力を教えてください。

“イラストレーション”って、もともと“例解、説明”という意味の言葉らしいんです。さらに“メディカルイラストレーション”で言うと、“医学知識をわかりやすく図解する”という意味になるので、もともとある情報にイラストを加えることによって役に立つことができるんですよね。文章で読んだものを頭の中で理解するのはかなり時間がかかってしまうことなので、イラストにすることで理解の時間を短縮して人の役に立てるという点は、この職業の魅力かなと思います。

 

お仕事言葉辞典 メディカルイラストレーター編

【素読み】 すよみ
編集者から最初にもらう“原案”と呼ばれる原稿を、まずイラストレーターが読者目線で読むこと。イラストの指示の仕方は担当する編集者によって異なるため、その場で必要とされているイラストを、素読みで読み解く力が重要となってくる。

 

お仕事道具見せてください!

【インタビュー】メディカルイラストレーター 荒井敬子「イラストにすることで情報を理解するための時間を短縮できる」

PC、iPad、 ディスプレイ
荒井さんのデスクに置かれた3点セット。イラストを描く際には、まずiPad上でラフを描き、それをPCに送付。送付されたラフはPC内のソフト“Adobe Illustrator”で清書され、完成します。

 

INFORMATION

株式会社メディックメディア メディカルイラストレーターグループによるnote

【インタビュー】メディカルイラストレーター 荒井敬子「イラストにすることで情報を理解するための時間を短縮できる」

URL:https://note.com/medicmedia_mig