Touch food VOL.16 大間まぐろ

旬の食材を紹介するTouch food。第16回目は日本人に馴染み深い「マグロ」。その中でもブランドマグロとして知れ渡る、青森県「大間まぐろ」をピックアップ。

◆はじめに
マグロといっても、日本国内では主に5つのマグロが存在し食されています。「大間まぐろ」はクロマグロ(通称:本マグロ)に該当し、日本沿岸を含む太平洋の熱帯・温帯海域に広く分布する大型魚です。体長300㎝、体重400kg以上に達することもあります。また、マグロの中で、最も高級とされており「黒いダイヤ」と呼ばれることも。特に旬の冬場に獲れるものは脂が多く、市場でも高値で取引きされます。

~その他のマグロの種類~
◇ミナミマグロ(インドマグロ)
その名の通り、南半球の中緯度海域に広く分布するマグロ。最大で全長245 cm、体重260 kgに達する。クロマグロに次ぐ高級マグロ。
◇メバチマグロ
クロマグロやミナミマグロと比べて腹が薄く、脂は少なく中トロや赤身が多い。漁獲量の一番多いマグロで、赤道付近に広く分布。最大で全長250 cm、体重210 kgに達する。
◇キハダマグロ
全世界の熱帯・亜熱帯海域に広く分布し、刺身でも食されるが、ツナ缶や魚肉ソーセージなどの加工品の原料に用いられる。最大で全長230 cm、体重200 kgに達する。
◇ビンナガマグロ
全世界の熱帯・温帯海域に分布し、キハダマグロ同様、刺身でも食されるが、加工品の原料に用いられる。最大で全長140cm、体重60kgに達するが、マグロの中では小型種。

「大間まぐろ」の歴史
本州最北端に位置する青森県下北半島大間町。津軽海峡に面し、天気の良い日には、函館山から恵山岬にかけての北海道の海岸を見渡すことができます。大間のマグロ漁は、100年以上の歴史がありますが、現在ほど有名なものではありませんでした。転機が訪れたのは2000年、大間のマグロ漁師の娘を主人公としたNHKの連続テレビ小説『私の青空』が放送されたことがキッカケで、「大間=マグロの町」として、全国に知れ渡るようになります。また、2001年の築地市場の初セリ※1で、一匹2,020万円でセリ落とされたことをキッカケに、「大間まぐろ」の高値が続きます。2013年の初セリでは一匹(222キロ)1億5,540万円の「大間マグロ」が誕生しました。2007年には、大間漁協によって出願された「大間まぐろ」が地域団体登録商標となり、出荷される30キロ以上のマグロの頬には、ブランドの目印となる「大間まぐろ」のシールが、誇らしげに貼られています。シールには通し番号が入っており、どの船がいつ、どんな漁法で獲ったマグロかを厳密に管理しています。

「大間まぐろ」の漁場と旬
大間港で水揚げされる「大間まぐろ」。マグロ漁は例年8月頃から始まり、翌年1月くらいまで行われます。水温が低くなる秋から冬にかけてが、マグロ漁の旬といわれ、この時期に獲れるマグロは大型のものが多く、上質な脂がのっています。大間町が面する津軽海峡は、日本海と太平洋を結ぶ海峡。黒潮、対馬海流、千島海流の3つの海流が流れ込むため、たくさんのプランクトンが生息しています。この良質なプランクトンがいる漁場では、マグロの他にも、身の厚いイカやイワシが水揚げされています。

「大間まぐろ」の漁法
日中は一本釣り漁、夜間は延縄漁※が行われています。どちらも網で捕獲するのとは違い、マグロに傷が付きづらい漁法です。特に大間の一本釣り漁は、まさに命がけで、常に危険と隣り合わせという極限状況。マグロの群れの前にエサを落とし、ハリを喰わせる方法ですが、操船技術、エサや道具の選定、エサの投入タイミング、合わせ、巻き取り技術など、全てがうまくいって釣れる非常に難しい漁法の一つで、1匹釣れば数百万円に達することもありますが、何か月も釣れない漁師がいるのも事実です。
大間で水揚げされるマグロは平均100キロ前後。普通は時速40キロ程度で泳ぎ、身の危険を感じたときや獲物を獲るときなどは最高時速120~130キロのスピードを出すといわれています。近年では船の近くまで寄ってきたマグロを、電気ショッカーを使うことにより一時的に感電させ、失神させてから船に水揚げができるようになり、 一番暴れる船際で取り逃がすことは少なくなりました。

※1新年最初のセリ
※2中心になる1本の幹縄に釣針をつけた枝縄を一定間隔に付け、水中に放置したのち引上げ、掛かった魚をとる漁法

▲解体される大間まぐろ
▲水揚げされる大間まぐろ

マグロ豆知識
日本人とマグロ食
日本人がマグロを食べ始めたのは縄文時代の頃からのようで、縄文時代の貝塚からマグロの骨が出土されています。古事記や万葉集にも「シビ」という名前でマグロのことが記述されています。江戸時代初期の世相を記した『慶長見聞集』には、「シビと呼ぶ声の響、死日と聞えて不吉なり」という記述があり、「シビ(鮪)=死日」を連想させるネガティブな印象がありました。また、流通や保存技術が発達していない当時、魚介類の鮮度を保つためには水槽で生かしたままという方法が主流でしたが、魚体の大きなマグロではその方法も難しく、鮮度の落ちやすいマグロは価値の低い「下魚」とされていました。

マグロブームの火付け役は醤油!
江戸時代中期頃になると調味料として「醤油」が普及します。そのことが、一大マグロブームを巻き起こします。マグロの身を醤油に漬けた「漬け(づけ)」が登場し、鮮度の低下を調理により遅らせることが可能となりました。「漬け」は江戸の寿司屋で人気メニューとなります。
しかし、マグロは今のような高級魚としての地位ではなく、アジやサバといった大衆魚でした。マグロの脂身部分で今では重宝がられる「トロ」に至っては、特に腐敗しやすいことから刺身で食すことは無く、また、元来脂っぽいものを好まない日本人には好まれませんでした。1960年以降、冷凍保存技術の発達や、肉食が国内で発展するといった戦後の日本人の食生活の変化により、脂の乗ったトロは珍重される部位になります。また赤身に比べ、トロは取れる数量が少ないことから市場価格も高騰していきました。

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