Touch food VOL.11 富山湾のホタルイカ

旬の食材に触れるTouch food。第11回目は富山の春の風物詩「富山湾のホタルイカ」を紹介します。

国指定特別天然記念物「ホタルイカ群遊海面」
富山湾は世界でも珍しい「ホタルイカ群遊海面」といわれ、富山市常願寺川河口から魚津港までの沖合1.3kmまでが、昭和27年3月29日に国の特別天然記念物に指定されていま す。では、「ホタルイカ」ではなく「ホタルイカ群遊海面」が特別天然記念物となったのは何故でしょう。これは「群れをなすホタルイカを間近で見ることができる」、「ホタルイカ漁で成り立つ漁業・商業がある」という、観光や産業としての保護を目的としているからなのです。また、「ホタルイカ」を特別天然記念物に指定すると食べることができなります。しかし「ホタルイカ群遊海面」が指定されたため、ホタルイカを食べることは問題ないのです。
富山湾のホタルイカは普段、水深約200~600mの深海に生息し、毎年3月から6月上旬にかけて、夜になると産卵のために海岸近くまで大群となって押し寄せてきます。太平洋岸でも捕獲されることがありますが、数百万匹の大群で海岸近くまで押し寄せるのは富山湾独特の珍しい現象。未明には潮の満ち引きによって沖に戻れなくなったホタルイカが波打ち際にたくさん打ち上げられていることがあり、これを地元では「ホタルイカの身投げ」と呼んで春の風物詩になっています。


「富山湾のホタルイカ」3つの特徴
①ほとんどが腹に卵をもった雌
ホタルイカは、産卵のために富山湾にやって来て2月頃までにほぼ交接を済ませます。ホタルイカ漁が解禁される3月以降に群れをなして沿岸に押し寄せるのは、そのほとんどが腹に卵をもった雌で、雄はほとんどいません。雄は雌よりやせ形で華奢、11月〜2月に交接を済ませると雌よりも早く死んでしまうのです。

②大きく、まるまる太っている
雌は昼、水深 200m以深の海底付近で生活し、夕方から夜中にかけて浮上し産卵します。1回に2,000個程の産卵をおこない、これを4~6回繰り返します。富山産のホタルイカはこの産卵期に漁獲されるため十分に成長し、まるまると太っています。

③ホタルイカの定置網漁は富山湾だけ
「天然のいけす」といわれる富山湾では、ホタルイカに限らず「定置網漁」が盛んです。「定置網漁」は、海中の定まった場所に網を設置し、回遊する魚群を誘い込むことで漁獲します。利点は、過剰な漁獲に陥りにくく、継続的な漁業が可能なことです。また、漁場が沿岸と近いため、鮮度の良い魚が水揚げされます。傷みが早いホタルイカにとって「定置網漁」はとても都合の良い漁法です。

▲ホタルイカ群遊海面風景
▲ホタルイカ定置網漁の様子

取材協力:富山県漁業協同組合連合会/写真提供:公益社団法人 とやま観光推進機構

鮮魚店の声>>> 内山敦史さん(ビッグ築地)

―富山湾のホタルイカの特徴を教えてください。
富山湾内で獲れるものはサイズが大きいです。潮の流れの影響や、良い餌を食べていることが影響するんだと思います。ワタ(内臓)も他のホタルイカに比べて大きいです。なおかつ、漁場が近い、定置網漁で漁をしているということもあって、鮮度もやっぱり良いですね。ホタルイカは春の魚なので、5月いっぱいくらいまでは店頭に出るのですが、今年はあまり量が獲れないみたいで、値段も高騰しています。だけど店頭に出ると必ず売り切れるくらい人気がありますね。

―ホタルイカを扱う際に気を付けていることはありますか?
とにかく鮮度の良いうちに仕入れることですね。ホタルイカに限らず、多くの食材は冷凍すると味が抜けて落ちてしまうため冷凍はできないんです。限りなく0度に近い状態で保管して、鮮度の良い状態で売れるようにしています。

―おいしいホタルイカの見分け方を教えてください。
富山湾のホタルイカとそれ以外のホタルイカだと大きさも全然違うので、もちろん味も違ってきます。ホタルイカは目玉と、背中にある軟骨を取り除けばまるごと食べられるのが魅力です。もちろん身もおいしいですが、ホタルイカの魅力といえばやっぱりワタ(内臓)ですね。富山湾のホタルイカはサイズが大きい分、ワタの量も多いので、味も他のものと比べて全然違ってきますね。

―ホタルイカのおいしい食べ方を教えてください。
ホタルイカは基本的に酢味噌で食べる人が多いですね。また、ホタルイカには寄生虫がいる可能性もあるので、基本的には熱を通して食します。シンプルな食べ方は酢味噌ですが、パスタや炊き込みご飯など、意外と料理のレパートリーも増えているようです。

[食材のプロがいるスーパーマーケット ビッグ築地]http://www.bigtsukiji.com/

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