Touch food VOL.8 ねぎ

旬の食材に触れるTouch food。第8回目はねぎの生産量日本一の市、埼玉県深谷市で作られる「深谷ねぎ」を紹介します。

新戒(しんかい)地域の深谷ねぎとは?
深谷ねぎは柔らかく、そして甘いのが特徴。ねぎの葉の部分の蜜はメロンとほぼ同じ糖度なのだとか。そんな深谷ねぎの味わいには生産地域の気候と土壌が大きく関係しています。特に深谷市の北部に位置する新戒(しんかい)という地域で栽培される深谷ねぎは、そのおいしさに注目されています。
この新戒地域はもともと砂のような柔らかい土を持つ土壌でしたが、小山川と利根川という2つの川に挟まれた地域で、大雨が降る度に洪水を繰り返していました。その際に、利根川から流されてきた粘土質の土がもともとの砂状の土と混ざり合い、ねぎに適した土壌を生み出したのです。また、冬場の深谷市は気温が低く、そのような気候になるとねぎは凍らないように、糖分を貯め込むことで防衛します。そのため深谷のねぎは甘くなるのです。
深谷ねぎの栽培のポイントの一つに「土寄せ」という作業があります。根本の土を何度も盛るこの作業により光を遮断することで、ねぎの白い部分が長くなるように育てます。粘土質の土は砂質の土に比べて風で飛びにくいため、この「土寄せ」にとても適しています。盛った土が安定し、ねぎをさらに太く大きく成長させるそうです。

土壌に合わせた工夫
ねぎの栽培に適している深谷市の新戒地域ですが、この土地ならではの苦労もさまざま。ねぎに適した粘土質の土壌には水が溜まりやすいという欠点があります。ねぎは乾燥には強いのですが、水に弱く、その水は根が腐る原因にもなります。また、ねぎに適さない高温多湿の夏の時期になると菌は元気になる一方、冬の作物であるねぎは弱っており、根腐れの部分から菌が入るなどのトラブルが起きやすいのです。
このような環境のなかでねぎを育てるための工夫の一つに、畑に勾配をつけるという工程があります。トラクターで盛り土をする際に意図的に勾配をつけることによって水を流しやすくするのです。
このようにその土地ごとの工夫を繰り返して、甘く太いねぎが作りだされるのです。

深谷ねぎが冬に収穫されるまで
まず種蒔きが行われるのが3月。その後、蒔いた種から出てきた苗を一度抜き、7月、8月頃になると手作業で再度苗を植える定植が行われます。
一番重要とされている作業が「土寄せ」。9月から月に一度「土寄せ」を行い、ねぎが一番成長する時期である11月には、月に2回「土寄せ」をして最後の仕上げとなります。ねぎが大きく育った12月が収穫本番となります。

▲土壌を活用して育てられるねぎ
▲大事な作業の一つ、土寄せ

生産者の声>>> 荒木俊彦さん、村岡輝明さん

―深谷ねぎを栽培されるなかでやりがいを感じる点は?
荒木:「おいしい!」と言ってもらった時です。市内や都内のレストランに自分たちのねぎを卸しているのですが、「深谷の新戒ねぎの天ぷら今年はまだ出ないの?」などと問い合わせをいただくことがあって。
村岡:「おいしかった」とお手紙をいただくこともあるので、そういう時はすごくやりがいを感じます。

荒木:私たちは深谷のなかでもこの新戒ねぎを広めるために対面販売なども行っているので、実際にお客さんの反応を見られる機会もあります。

―深谷ねぎの味の特徴は?
荒木:12月下旬頃から収穫するねぎは、他のねぎにはない甘さと柔らかさがあると思います。この地域は気候や土壌に恵まれているので、そのようなねぎが採れるんです。
村岡:熱を通さないと辛いのですが、焼きねぎや天ぷらにするとその甘さがより際立ちます。

―深谷(新戒)ねぎを広めるためにされている活動について教えてください。
荒木:この新戒で作られている「新戒ねぎ」が深谷ねぎの原点なんです。味がおいしいという点についても自信があるので、この「新戒ねぎ」をブランド化するにはどうしたらいいかと考えました。この「新戒ねぎ」を広めるために今は、対面販売をしたり品評会に出したりして、なるべく多くの人に食べてもらうための活動をしています。
▲対面販売をする荒木さん、村岡さん

取材協力:深谷市農業振興課、 株式会社NOKA

YTJPは一般社団法人エコロジー・カフェと共に食育・環境問題に取り組む高校生を応援します。
一般社団法人 エコロジー・カフェは、絶滅の危機にある野生生物の保護や消滅の危機にある生態系の保全などを適して地域社会に寄与することを目的としています。
http://ecology-cafe.or.jp/