【インタビュー】福助株式会社マーチャンダイザー 井上寿美礼「描いていた未来が実際に起こったときに本当に嬉しくなる」

今号2本目となる“Worker’s file”は、福助株式会社のマーチャンダイザー井上寿美礼さん。紳士靴下の企画・製造・販売まで携わる井上さんがものづくりに興味を持ったきっかけや楽しさについて聞きました。

【インタビュー】福助株式会社マーチャンダイザー 井上寿美礼「描いていた未来が実際に起こったときに本当に嬉しくなる」

井上寿美礼(いのうえすみれ)
東京都出身。日本女子大学文学部英文学科を卒業後、福助株式会社に入社。入社1年目から紳士靴下の企画・販売に携わる。客観的な視点で、紳士靴下の開発を手掛け、肌に優しい素材や機能にこだわった靴下を企画・開発している。

 

◆自分の中で描いていた未来が実際に起こった時に本当に嬉しくなる

仕事内容を教えてください。

紳士靴下の企画を担当しており、商品のアイディア出しから最終的に形になって販売されるまでを一貫して担っています。企画の中で大事になってくるのが工場との綿密な打ち合わせ、徹底したサンプルの確認作業です。作る商品が決定してから、使用する原料の選定、デザイン内容、コストなど、間違いがないように工場に連絡します。また素材や機械によっては不良・乱寸が出ることがあり、品質試験で不合格になる場合があります。そのため、都度サンプルは慎重に確認しています。

 

現在の仕事に就くまでの経緯を教えてください。

大学時代からものづくりに興味があり、中でも作ったものが自分の目でわかるものがいいなと思っていて。特に惹かれたのが、洋服や靴下といった自分で身に着けるものでした。福助は100年以上の歴史のある会社でみんなが知っているブランドということもあり、内定をいただいた時は嬉しかったです。入社後は研修で様々な部署の業務内容を学ぶ中で、商品作りの根幹であり、会社の中で重要な役割を担っていると感じた企画に興味を持ち現在の部署を希望、1年目から企画に携わっています。

 

井上さんが企画した商品の代表例を教えてください。

近年、ジェンダーレスや女性的な要素を取り入れた男性商品も多くあると思います。そんな中で、男性用の靴下はビジネスシーンで履くしっかりとした素材のものは多いけれど、肌に優しい素材のものは少ない気がしました。そこで、男性にも肌に優しい靴下を身につけてもらえるように柔らかい素材の靴下を開発したんです。それまでしっかりした男性用靴下ばかり作ることが多かったため、初めての試みでした。実際に作ってみて、展示会も含めその後の受注の反応も良く、思い入れのある商品です。

 

企画を考える時に意識していることはありますか?

トレンドをキャッチすることです。そのために量販店や原宿、表参道などに市場調査をしに行きます。またインスタグラムなどのSNSを見たり、トレンド情報を扱うセミナーを受けて参考にしています。特にSNSは情報量が多く、良し悪しの取捨選択が難しいので、消費者の目線に立って見るようにしていますね。また、企画を立ててデザイナーにイメージを伝える時は、できるだけ具体的に意見を伝えることを心がけていて。編み方や表現したいものが定まっていない状態で伝えると、自分のイメージと違うものが出来上がることが多いです。そういったことをなくすためにも、意見を交わすことは大事にしています。

 

企画をする際の難しいところはどこですか?

福助は原料や技術にとてもこだわりがあるので、それを生かしながら様々なニーズに合わせた商品を作り出すことが難しいです。入社する前は、消費者目線でパッケージに書かれていることしか見ていませんでした。自分が企画に携わるようになり、商品ひとつにたくさんの思いが込められていると感じました。例えば、原料の綿と言っても、種類が多いですし、それを強い糸にするのか、柔らかい糸にするのか、どのような加工にするのかなど、できることが沢山あります。何をポイントにして最終商品に落とし込むかはいつも悩みます。

 

新しい企画や商品を考える上で楽しい部分はどこですか?

福助は会社の歴史が長く、原料メーカーや工場などたくさんの人脈があるため、作りたいものが作れるという点です。私は原料や服飾の知識がないところからスタートしましたが、先輩や工場の方、原料メーカーの方に教えていただき、イメージ通りの商品が出来上がってきた時におもしろく楽しいなと感じます。一方で、長い歴史があるということは、商品自体が会社の名前に影響を与えるということです。何を作るにしても、パッケージには「福助」と名前が書かれるため、とにかく良い商品を作ろうという意識は常に持っていて。品質や素材、デザイン、機能性全てにこだわっている福助だからこそ作れる、他社に負けない商品を作りたいと思っています。

 

仕事をする中でのやりがいを教えてください。

自分が企画した靴下が商品化され、実際に商品が売れた時にやりがいを感じます。リサーチをしている時“次のシーズンはこういう商品が流行するのかな”と想像しながら企画を考えているのですが、実際に店頭に並んで、担当の方に「売れています」と言われた時は、“自分の中で描いていた未来が実際に起こった”と本当に嬉しくなります。そして、関わってくれたデザイナーや工場の方など全員がウィンウィンの状態で終われた時はやはり達成感がありますね。

 

仕事をする上で持たれているポリシーはありますか?

人の意見に対して否定的なことを言わないことです。自分の中にプラス、マイナス関わらずどんな意見でも受け入れたいという思いがあります。お客様の要望、デザイナーや工場の方もやりたいことがそれぞれあり、意見がまとまらないことも多いです。役職・年齢・立場関係なく、頂ける意見を聞いた上で、最適解を生み出したいと思いながら仕事をしています。

 

ものづくりに興味のある高校生にメッセージをお願いします。

ものづくりに興味のある人は、完成品を見て興味を持った人が多いと思います。ものづくりの会社の楽しいところは、完成するまでの過程を知り、それに自分が関われるところです。そのため、靴下だったら靴下の原料や編み方といった細かい工程も楽しめる人がいいと思います。もし何かを作りたいと思っている人がいるなら、自分が特に何に興味があるのか深掘りしてみてほしいです。

 

お仕事言葉辞典 マーチャンダイザー編

【デカ】でか
10倍を意味する接頭語で1デカ=10足で表される。商品の発注や工場に数量を伝えるといった、大きい数を提示するときに使用する。「最低でも100デカ(1000足)の生産が必要」といった使い方がされる。

 

お仕事道具見せてください

【インタビュー】福助株式会社マーチャンダイザー 井上寿美礼「描いていた未来が実際に起こったときに本当に嬉しくなる」

カラーブック、靴下の寸法を測るメジャー
靴下の色を選ぶためのカラーブックとメジャーは必需品。一見問題がないように見えても適正サイズからミリ単位でずれていることもあるため、サンプルを一つ一つ慎重にチェックしています。

 

INFORMATION

井上さんが企画に携わる福助株式会社

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