Worker’s file アニメーション監督 瀬名快伸(42)

さまざまな職業で活躍する人に迫るWorker’s file。第20 回目は、11 月27 日に公開される映画『君は彼方』の監督を務めた瀬名さん。本作に込めた想いを始め、アニメーション監督に至るまでの経緯などを聞きました。

Worker’s file アニメーション監督 瀬名快伸(42)

瀬名快伸(せな よしのぶ)
愛知県出身。実写作品の監督を経て、アニメーション映画制作に転身。2014年には、第10回山形国際ムービーフェスティバル2014にて、短編アニメーション作品『奇魂侍』で山形県知事賞を受賞。11月27日には、長編劇場アニメーション映画初監督となる『君は彼方』が公開予定。同作では脚本・原作も務めている。アニメーション以外にも、企画・映像ディレクター、声優、作家、楽曲を手がけるなど、幅広いジャンルで活躍している。

自分がやりたいと思うポジティブな部分に目を向けて、とにかく自分を表現してほしい


ー仕事内容を教えてください。

映画全体のイメージを決めるというのが主です。僕は絵を描くのが得意ではないんですけど、まずは文字の情報としてワードコンテというものにその場面の画の情報を書き起こしていく作業があります。それが今回の『君は彼方』で僕がやった主な作業になります。あと今作は並行して原作も書いているので、脚本を直したりだとかそういう作業をしていきました。


―今作で映画監督をされるまでの経緯を教えてください。

僕はもともと実写の監督をやっていたんですけど、それと並行してアニメーションもやりたいなと思っていたので、実写からアニメーションに転向しました。だけど元が実写からなので、やっぱり写実的な演出やカット割りをアニメーションの中に取り入れていきたいという想いもすごくあったんです。さらに僕はもともと幼少期の頃からアニメが大好きだったので、漠然とアニメに携わりたいな、アニメの監督をやりたいというところから、今作に至りました。ただ、監督というだけではなくて、お話を作りたいという想いもあったので、監督と脚本どちらもやらせていただいた感じになります。


―そもそも映画の勉強はどのようにされたのですか?

映画の学校には1年しか行っていないです。僕分析をするのがすごく好きなんですよ。いろいろな映画を観て、なぜこの映画はヒットしているのか、この映画はヒットしていないのか、この映画は興行的にはヒットはしていないけれど評価されているのか、という3つに分類して分析していった結果、どんどん発見していって、自分の中で方法論を確立していった感じですね。


―『君は彼方』を通して伝えたいことは何ですか?

この作品の構想を始めたのが3〜4年くらい前なんですけど、“メタ認知”という言葉に出会ったのがすごく大きくて。“メタ認知”は、自分を客観視するということなんですけど、この言葉と出会った時にこれをコンセプトに映画を作りたいと思ったんです。『君は彼方』という映画では“伝えること”そして“何を伝えるのか”という大きなテーマがあります。僕自身、よく喋るしフレンドリーだと思われることが多いんですけど、実はそんなことはなくて人見知りですし、言いたいことをあまり言えずに息苦しく生きてきたんです。そこで、自分の大きな夢である映画を作ろうとなった時に、“メタ認知”をテーマにして描こうと。今まで息苦しさを感じていた人って、ここに来るまで「息苦しいです」って言えなかったと思うんです。誰かに何かを伝えたい時も、“これを言ったら嫌われちゃうかも”とか、ネガティブな想いが頭をよぎっちゃうんですよね。言いたいことを言えずに生きてきた息苦しさというのを映画の中に投影できたら、同じように苦しんでいる人に共感してもらえるんじゃないかなと思い、今回の映画を作りました。


―『君は彼方』の舞台は池袋ですが、池袋を舞台に選んだ理由を教えてください。

もともとの舞台は渋谷だったんです。だから主人公の澪の苗字が宮益だったりするんですけど、あるプロデューサーの方に「この映画のコンセプトには池袋が合っているよ」と言っていただいて、そこからは区長さんに話を聞いたり、プレゼンをさせていただいたりしました。そのプレゼンをキッカケにいろいろな企業さんに協力していただけることになって、偶然が重なり、池袋を舞台に映画を作ることができた感じです。あとは僕が『君は彼方』で描いた“再生”という部分と、池袋がすごくリンクしていたりもしていたんですよね。僕はもともと池袋という街を知ってはいたんですけど、この映画をキッカケに改めて電車に乗ってみたりして。街の素敵さも感じましたし、これからどんどん生まれ変わる街なんだなというのも感じて、『君は彼方』にリンクする街という印象を受けました。


―瀬名さんのようなクリエイティブな仕事をしたい高校生が、高校生の今からできることはありますか?

自分が作ったものを人に観てもらった方が良いと思います。僕は人に見せた時に批判でやられちゃったんですよね。作品を発表して、いろいろなコメントを貰うんですけど、ポジティブなものよりもネガティブなものを真に受けてしまって、自分を表現するのが怖くなってしまった時期があって。だからそういうものに負けないでほしいと思います。どんなに頑張っても、僕のことが嫌いな人たちってやっぱりいるんですよ。その人たちだけを見ていると心が病んでしまうんです。だけど、特に何もしていないのに自分のことを好きでいてくれる人もいて。だから批判的なものにばかり目を向けるのではなくて、自分がやりたいと思うポジティブな部分に目を向けて、とにかく自分を表現してほしいです。例えば将来会社員になったとしても、絵を描くのが好きならSNSで公開してみればいいし、やっぱり自分の作品をどんどん出していく。で、ネガティブなものではなくポジティブなものに目を向けて、自分に自信をつけていってほしいです。


―高校生にメッセージをお願いします。

僕は高校時代常に葛藤していた気がするんですけど、もし高校時代の自分に会えるのであれば、今の葛藤がゆくゆく成長の糧になって、未来があるんだよということを伝えたいですね。葛藤して逃げたくなった時もあるんですけど、最後の最後で逃げずに少しでも前を向こうとしたんです。だから葛藤したとしても、道が分からなくなりそうになってもとにかく続けてみる。そうすると自分が思い描いてもいなかった素敵なことが起こるかもしれないですよ。

お仕事言葉辞典>>>アニメーション監督編

【コンテ】 コンテ

「continuity(連続)」の略。映画の撮影台本を指す言葉。シナリオをもとに、画面ごとに実際の撮影に即したセリフや動作、撮影法などの細かい指示を書き込んだもの。ラジオ・テレビの放送台本についても使用する言葉。

お仕事道具見せてください!

Worker’s file アニメーション監督 瀬名快伸(42)

アニメーション制作の必需品
ワードコンテを作成するPC、絵を描く際に人間の動きを確認するデッサン人形、絵コンテを作成するコンテシート、そして台本。『君は彼方』制作の必需品です。

瀬名さんが監督を務めた映画

『君は彼方』
11月27日(金)公開

https://www.kimikana.jp