Touch food VOL.15 二十世紀梨

旬の食材に触れるTouch food。第15回目は全国シェア50%以上を誇る鳥取県の「二十世紀梨」を紹介します。

梨の歴史
梨の歴史は古く、約2500年前の中国が原産。日本で梨栽培が始まった時期は明確ではありませんが、約1800年前の登呂遺跡(静岡県静岡市)から、食用にされていた証として梨の種子が見つかっています。文献に初めて登場するのは、約1300年前(奈良時代)の「日本書紀」。桑や栗と一緒に、その栽培方法と栽培を奨励する記述があり、その当時には既に梨が栽培されていたと考えられています。

二十世紀梨の種類と起源
梨は主に和梨、中国梨、洋梨の3種類に分かれ、国内では主に和梨が生産されています。和梨も果皮の色により「赤梨」と「青梨」の2つのタイプに分類され、二十世紀梨は「青梨」の中の品種の一つ。1888年(明治21年)に、松戸覚之助が親戚宅で見つけた苗木を譲り受け、それを実家の梨園で10年育て結実したのが二十世紀梨です。当時は19世紀末、名称には「新世紀の王者になるだろう」という願いが込められています。
 その後1904年(明治37年)に、鳥取県の梨農家、北脇永治により10本の二十世紀梨の苗木が鳥取県に導入されます。その苗木をもとに鳥取県内各地に、二十世紀梨の栽培が広がり、全国に名を馳せる二十世紀梨の産地として成長していきました。

二十世紀梨の栽培
 二十世紀梨が鳥取県を代表する果実として認知されるようになった背景には、黒斑病※1の克服に取り組んだ方々の苦労があり、現在もその苦労は二十世紀梨栽培に反映されています。
良質のものを得るために幼い果実を間引く、“摘果”後の5月、幼果に小袋をかけ、6月には小袋の上から大袋をかけます。この袋かけは、外観の保持のほか黒斑病の防除を目的として行われています。黒斑病対策には、袋の改良を始め、袋かけを1回にするなど、省力化のための技術が開発されています。その他にも受粉、収穫、剪定※2などは、いずれも手作業で行われるなど、梨栽培はたいへん骨の折れる仕事なのです。
※1 二十世紀梨栽培において、最も重要となる病害。果実に発生すると後に表面がくぼみ、中央部に黒いかびを生じる。葉では黒色の斑点を生じ、病斑は広がり不正形となったり、周縁がやや淡黄色となり輪紋を生じることがある。
※2 樹木の枝を切り、形を整えたり、風通しを良くすること。 見た目を良くするだけではなく、養分を効率化させ生長を促進、病害虫の繁殖を予防する効果がある。

▲鳥取県の県花にもなっている二十世紀梨の花
▲手作業で丁寧に育て上げられる二十世紀梨

取材協力:鳥取県商工労働部兼 農林水産部市場開拓局 食のみやこ推進課

おいしい梨の見分け方

おいしい二十世紀梨は、色つや良く重量感があります。また、緑色の中に黄色い模様が散在して見える(トラ熟れ)梨は糖度が高くおいしいとされています。
二十世紀梨はジューシーで、酸味と甘さのバランスのとれた爽やかな味、シャキシャキとした食感が特徴です。また熟度が進むと、果色が黄緑色から黄色になります。シャキっとした食感が好きな人は果色が黄緑色のもの、甘さ重視の人は黄色のものを選びましょう。

鳥取二十世紀梨記念館 なしっこ館
 平成13年に開館した、国内唯一の梨の専門展示施設。鳥取県倉吉市にあるこちらの施設では、二十世紀梨の巨木オブジェや世界の梨の展示を始め、昭和初期の梨農家の様子を再現した『梨と生きる「二十世紀梨」ものがたり劇場』などが来場者を迎えます。また、食材を新鮮に保つ“氷温技術”で処理された3種類の梨を、1年中試食することもできます。

鳥取二十世紀梨記念館 なしっこ館
〒682-0816
鳥取県倉吉市駄経寺町198-4 倉吉パークスクエア内
【開館】9:00〜17:00 (入館は16:40まで)
【休館】第1・3・5月曜日(祝日の場合は翌日)、12/29〜1/3
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